天使くん、その羽は使えません (短)
(怖!無表情だから余計にこわい!)


私が苦笑いを浮かべている間に。天翔くんは私が持っていたシャトルを、ひょいと掴む。もちろん、羽が崩れないように、コルクの部分を持って。


「というか、参考書で見るよりも先に知ってたよ。出会って数分後に、俺にシャトルの説明を始めたのは晴衣だから。忘れたの?」

「え?あ……」


――シャトルって、羽の事だよ。ホラ、これ


そう言えば、そんな事を言った気がする。天翔くん、よく覚えてるなぁ。すると天翔くんは「羽ってさ」と、シャトルを見ながら尋ねた。


「この羽って、本物の鳥の羽なんだよね?」

「うん。確か、水鳥の羽だったかな?本物だからこそ、一度折れたら、もう使えないんだよね」

「……ふぅん」


天翔くんは羽を丁寧になぞった後、私に返す。え、終わり?何だったんだろう。急に触りたくなったのかな?

不思議な天翔くん――と思っていると「行くよ」と。天翔くんは、ラケットバッグを持った。


「どこに?」

「いつもの自主練」

「今日の部活はもう済んで、」
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