天使くん、その羽は使えません (短)
「明日が大会でしょ?なら、最後の追い込みをしておかないとね。最近バドの調子がいいなら、なおさらね」

「え!バドの調子がいいって、なんで知ってるの!?」


すると天翔くんは「晴衣を見てれば分かるよ」と無表情で言った。え!私そんなにニヤけてたかな!?気をつけないと……。


「で、どうするの?自主練。するの?しないの?」

「……する」

「うん」


うん――と天翔くんが返事をした時。彼の口の端が、少しだけ上がった気がした。

え、笑った?
天翔くん今、笑ったの?


「……っ」

「なに?ジロジロ見て」

「や、なんでも……ない。です!」

「なんで敬語なの」


フッと。

天翔くんが、また少し笑った。

それは決して、見間違いなんかじゃなくて――


「あ、天翔くん!」

「ん、なに」

「えと、あの……ありがとう」


私は思わず、お礼を言ってしまった。

< 52 / 89 >

この作品をシェア

pagetop