天使くん、その羽は使えません (短)
「もしかして、自転車をメンテナンスしてくれたのって天翔くん?」

「うん。動画を見ながらの、にわか知識だけど。会場に着くまでに自転車で疲れてちゃ、本末転倒だからね。少しでも楽に移動が出来たらなって思って」

「そうなんだ、ありがとう!」


嬉しい、嬉しいな。そんなに私のことを考えてくれてたなんて!

最初こそ「棄権して」なんて否定的だった天翔くん。だけど今は、第二のお母さんみたいに、私の事を気にしてくれる。


「天翔くんは優しいね!」

「そんな事ない」

「ううん。優しいよ!出会った時からずっと、天翔くんは優しい子だよ。

あ、だからかな?」

「なにが?」


自転車の最終チェックをしながら、天翔くんは返事をした。座り込む天翔くんの隣に、私もしゃがみこむ。

そしてニコッと、笑みを浮かべた。

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