天使くん、その羽は使えません (短)
「天翔くんが優しいから、会った日から今まで――私は毎日が楽しくて、幸せなんだよ!」
「っ!」
「じゃあね、いってきますー!良い結果を報告出来るよう、頑張ってくるねー!」
シャーと自転車を漕ぐ私。
その後ろ姿を見続ける天翔くん。
「……」
少しして、呆然としていた彼の口がピクリと動く。そして呟いた事。
それは――
「ごめん、晴衣」
そう言った彼の顔に浮かぶのは、いつもの無表情……ではなく、苦々しい顔。
天翔くんはしばらく、その顔のまま。自転車置き場に、立ち尽くしていたのだった。