天使くん、その羽は使えません (短)
「はぁ、はぁっ!」


(ヤバい。シングルって、広いコートの中を一人で動くから、すごくしんどい!)


かと言って、2対2のダブルスが楽かと言われれば、それは違う。だけど……


(シングルは、体力の減りが早すぎるっ!)


このままファイナルセットまで行くと、私は早い段階で呼吸が乱れる。そうすると、試合を続行するのは不可能。


(でも、この試合は落としたくない。何がなんでも先に21点とって、ファイナルセットまで繋ぎたい!)


観客席をチラリと見ると、智恵ちゃんが不安そうな顔で私を見ていた。うん、分かってるよ、智恵ちゃん。

そろそろ体が限界じゃないの?って。そう心配してくれてるんだよね。大丈夫、私もわかってる。

だけど――ごめんね智恵ちゃん。私、自分を、止められないの。


「「「せーの、1本ー!!!!」」」

「はぁ、はぁ。ふぅー……」


仲間の「1点を入れて」という声援が、私の背中を後押しする。私は覚悟を決め、相手選手が持つシャトルを見た。


(もし呼吸が出来なくなったとしても、後悔はない。だから智恵ちゃん、私は棄権しないよ。絶対このコートに、

シャトルは落とさせないから!)

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