天使くん、その羽は使えません (短)
天翔くんはシャトルから手を離す。何の支えもないシャトルは地面に落ちる、かと思いきや。わずかに上下しながら、空中を漂っていた。


「ど、どういうこと?」


焦る私に、天翔くんは少しだけ眉にシワを寄せた。


「このシャトルは、俺の天使の羽で作った。晴衣が打ちたい場所に飛ぶよう、細工がしてある」

「え……」

「晴衣にとって、この大会が最後の大会なんだ。だから、勝たせてあげる。このシャトルを使って、試合に勝って」

「っ!」


天翔くんは、私に無理やりシャトルを握らせた。いつものシャトルと重さは変わらない。確かに、これなら相手の選手も「普通のシャトル」と思うはず。

でもね、天翔くん。


「この羽は、使えないよ」
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