天使くん、その羽は使えません (短)
「え……」


驚いた顔で、私を見る天翔くん。

何言ってんだって思うだろうね。
どうしてって疑問を持つだろうね。

でもね天翔くん。
このシャトルは、使ったらいけないんだよ。


「私のために大事な羽を使ってくれてありがとう。でもね、私は実力で勝負したいんだ。言ったでしょ?勝率が低くてもいい。参加することに意味があるって」

「でも、」

「最期の思い出作りのためにズルして勝っても、幸せになれない。自分の実力の中で精一杯あがいて、がんばりたいの。それが私なりの、生き方だから」

「晴衣……」


眉を八の字にして、悲しい表情を浮かべる天翔くん。初めて見る顔だ。

天翔くんも、そんな顔が出来るんだね。「悲しい」って思う心が、あるんだね。

それが分かっただけで、とても嬉しくなった。
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