天使くん、その羽は使えません (短)
結局、いくら自転車をメンテしようと、俺の頭の中にある「晴衣の寿命」は変わらなかった。
晴衣の死の瞬間も、変わらなかった。
大型トラックに、自転車ごと……。
「そう、あのトラックだ」
晴衣が大会を終えた帰り道。
俺は空を飛んで、空中から晴衣を見ていた。すると晴衣は、本当にトラックに跳ねられてしまった。
ドンッ
空中に投げ出された晴衣の体。血まみれの彼女の体を、俺は迷うことなくキャッチした。
「……晴衣」
「――」
息はない。呼吸もない。流れている血だけが熱く、さっきまで晴衣が生きていた事を物語っている。
「晴衣、晴衣」
いくら呼んでも返事は無い。
揺さぶっても、大量の血が流れるだけ。