天使くん、その羽は使えません (短)
「……晴衣」


何してるの、起きてよ。


「ねぇ、晴衣」


試合の結果、教えてよ。なんとなく分かるけどさ、君の口から聞きたいんだよ。


「晴衣、せい……」


俺に名前をくれた君。
俺に下界での居場所をくれた君。
俺を立派な天使だと言ってくれた君。


「――……嫌だ」


ねぇ晴衣。このままなんて嫌だよ。俺はこれからも、晴衣のそばにいたい。君が生をまっとうする姿を、もっともっと、見ていたいんだよ。


「だから起きて、晴衣。
お願いだ……っ」


ギュッ


気づけば俺は、晴衣を抱きしめていた。すると晴衣の手が、ダランと下へ落ちる。

その光景は、俺が「晴衣の死」を実感するには充分すぎて……俺の目から、自然と涙が零れ落ちる。
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