天使くん、その羽は使えません (短)
「ねぇ神様、俺の寿命はいらないから、晴衣を生き返らせて。この子は死んじゃダメだよ。俺は……

晴衣にもっと、生きていて欲しいんだ」


だんだん白くなっていく晴衣の顔。もう二度と笑わないその顔を見て、俺は思い出す。


――いい物を見させてもらったっていう感謝
――私にいい物を見せてくれて、ありがとう


ときどき、晴衣はこんな事を言っていた。

晴衣の言う「いい物」って、なんだろう。晴衣がそう言う時は、決まって俺の顔を見ていた。

ということは、俺の顔にヒントがあるのかな?もしくは、俺の顔が答え?

それなら――


「晴衣、見て。俺……笑ってるよ?」


泣きながら笑うって、難しい。どうしても口がひきつる。

でも俺、頑張ってるよ。だから晴衣、見てごらん。その目を開けて、俺を見て。


「晴衣……」

「――」

「やっぱり俺の笑顔は、いい物じゃなかったのかな……」


笑うのをやめて、晴衣の肩に顔を埋めた。細い肩さえも、冷たくなっている。この体から晴衣がいなくなるような気がして、俺はまた、涙を流した。

すると、その時だった。

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