天使くん、その羽は使えません (短)
バサッ

「本当に気に入らない。どうしてお前のような奴が、俺の弟なんだ」

「兄さん……」


顔を上げると、兄さんがいた。いつも怒っている兄さんは、今日も眉間にシワを寄せている。


「何をグズグズしている。死んだ人間が目の前にいるんだぞ。さっさと魂を取れ」


早くしろと言わんばかりに、兄さんはアゴで俺に指図した。だけど俺は――


「晴衣の魂は、持って行かない」

「なに?」

「晴衣はまだ死んでない。まだ死なせない。俺が、晴衣を生き返らせる」

「……」


兄さんは黙った。だけど「チッ」と舌打ちをし、素早く俺の背後に回り込む。そして、いつ出したか分からない大剣で、俺の片翼を迷いなく切った。


ザンッ


「哀れな準天使。地に落ちろ」

「ッ!?」


いくら天使といえど、片翼で飛ぶことは出来ない。物凄いスピードで、俺と晴衣は逆さまに落ちていった。
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