天使くん、その羽は使えません (短)
「晴衣……!」


晴衣を守ろうと、自分の手と足を使って彼女の体を覆った。地面は、すぐそこ。


「晴衣、ごめん……っ」


もしも君を守れなかったら。
もしも君を生き返らせることが出来なかったら。

本当にごめん――

だけど、弱気になった俺の心に、晴衣の凛とした声が響く。


――自分の実力の中で精一杯あがいて、がんばりたいの。それが私なりの生き方だから


「っ!」


そうか、そうだよね。

晴衣は、最後まで諦めなかった。生きることに懸命だった。カッコよく、生をまっとうしたんだ。

だったら、俺も――


「お願い、飛べ!!」


片翼に向かって命令する。すると片翼はバランスが悪い中、懸命に羽ばたいた。そして間一髪のところで、俺たちはゆっくりと地面に着地した。


「はぁ、はぁ……っ」

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