天使くん、その羽は使えません (短)
「……」


ん?動かなくなった。天使くんが固まったぞ。どうしたんだろう?


「あ、そっか。今日は挨拶に来ただけですよ、ってことかな?これから天界に戻るの?」

「……」


何も喋らない天使くん。え、ええと……。

私が困っていると、天使くんがボソリと何かを言った。ん?「帰れない」とか、なんとか?そう聞こえたけど……


「って!え!?帰れないの!?」

「一度天界を降りたら、魂を引き取るまでは帰れない決まりなんだよ」

「じゃ、じゃあ、なんで今日きたの?」


聞くと、天使くんは一瞬だけ苦い顔をした。何かを言いたそうに口を開けて、眉を顰めて……。だけど何か思い直したのか。俯いて、さっきより更に小さい声で喋った。


「俺が来たいから、ここに来た」

「え……」

「……悪い?」


わ、悪い?って言われても。虚勢を張った雰囲気をバンバンだしながら、そんな事を言われても……信じられないっていうか。

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