天使くん、その羽は使えません (短)
「ふ、……ひどい言われようだ」


兄さんから酷いことを言われているのに、全く悲しくない。むしろ、心が温かくなる。

今まで、俺と兄さんは仲が悪いって思ってた。だけど、それは思い違いだったんだ。だってお互いの心は、こんな近くにあったのだから。


「兄さん、ありがとう」

「ふん」


相変わらずの仏頂面。だけど――兄さんの怒った顔を、もう怖いとは思わなかった。


「俺はもう行く。二度と天界に戻ってくるなよ」

「もう、会えないの?」

「……すぐ会える」

「どういう、わ!?」


聞き返したかった。だけど羽ばたいた兄さんの羽が俺の顔に当たり、視界が遮られる。


「わぶ!」

「お前が死んだ時。お前の魂は、俺が引き取ってやる。その時まで……生にはげめ、弟よ」

「!」


その時。羽の隙間から見える兄さんが、笑ったように見えた。とても優しい顔だ。
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