失恋タッグ
「有森と組んでから、2か月くらい経ったころでしょうか。
いきなり彼女から好きになったから付き合ってほしいと言われたんです。」

新人同士でそんなラブロマンスがあったとは..。

私は思わず「そうなの。」と前のめりに聞き入る。

「でも、僕はそこまで彼女のことを知らなかったし、一度は断りました。
でも、彼女がもう少し自分を知ってから考えてほしいと言うので答えを保留にしたんです。もしかしたら、一緒に仕事をしていて好きになる可能性もゼロではないですし。まあ、俗に言うキープというものでしょうか。」

キープって、人を物みたいに..

若者の恋愛の軽さに私は眉をひそめた。

「でも、有森とペアを組みましたが、彼女の仕事に対する姿勢は目に余るものがありました。僕は仕事に責任感のない人間は嫌いです。
早々に断ろうと思ったのですけど。
ペアを組んでいた手前、振ってしまったら
その後、仕事がやりにくくなります。」

「まあ、そうね..」

一度、ペアを組んだら嫌でも毎日二人で打ち合わせをするのだ。
そう考えると、安易に振ることが出来ないのもうなずける。

「この仕事が終わって、改めて断るつもりだったのですが、
先日、急に彼女に呼び出されてやっぱり付き合えないと言われたんです。」

朝比奈君は、大きく息を吐いた。

「もしかして、沙苗ちゃんのことがやっぱり好きになってたとか?」

「いえ、それはないです。ただ..」

「ただ?」

「知らないうちに、逆に僕が彼女にキープされてたと言うわけです。酷いと思いませんか?」

朝比奈君は憤慨したように同意を求めてきた。
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