失恋タッグ
これでは八つ当たりだ。

しかも、後輩の前で泣いてしまうなんて最悪だ。

だけど、一度溢れた涙はそう簡単にはとまってくれない。

拭っても拭っても、後から後から流れてくる。

朝比奈くんは自身の上着のポケットを探ると
紺色のハンカチを取り出して、何も言わずにそっと私に差し出した。


私は綺麗にアイロン掛けされたブランド物のハンカチに少し戸惑ったものの、「ごめんね。ありがとう」と小さく呟きながらそれを受け取った。

「これじゃあ、僕が泣かしてるみたいですね」

朝比奈くんは、困ったようにポツリと呟いた。

視界の端に、チラチラ視線をよこす客が見えた。

「朝比奈くん、先に帰っていいわよ」

私はハンカチで目元を拭きながら、
グスンと鼻をすすった。

「ここで先輩を置いて帰ったら、益々酷い男だと思われますよ。」


私はその言葉に思わず「そうね」と泣きながら笑ってしまった。

「勝手なことを言いますが、、
先輩にはこんなことで泣いてほしくないです。
僕の中で、先輩はいつも凛としていて頼りがいのある格好良い女性なんです」


「ほんと、勝手だわ。私だって人間よ。」


「僕にとっては、憧れの先輩です」


ああ言えばこう言う朝比奈くんに私は諦めたように息を吐いた。


「話を続けて。聞いてから、朝比奈くんと組むかどうか決めるわ」

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