失恋タッグ
「その点、僕は倉木リーダーよりは少なからず最近の市場の動向にも詳しいです。彼よりはセンスだってあると思ってます..」
そう言って、自信を含んだ声色の朝比奈君の左腕には海外ブランドの新作の腕時計が光っていた。
前に会社の慰安旅行でも、私服を見たことがあるがシンプルな服装なのに
さりげなくハイブランドのもの身に着け、嫌味に見えないお洒落が彼のセンスの良さを際立たせていた。
「先輩...僕と組めば必ずヒットさせると約束します」
その自信はどこから湧いてくるのか、でもその自信がこの子を皆惹きつけているのだと改めて気づかされる。誰でも自信のない人間より自信に満ちた人間に憧れるものだ。その証拠に、今でも営業部から朝比奈君を頼って彼に意見を求めて商品開発部にまで訪ねてくるものは多い。
「私と朝比奈君がペアを組んで、ヒット商品を生み出してあの二人に見返してやるってこと?」
「そうです。何故か有森は先輩に固執してます。悪い意味でね...
倉木リーダーを寝取ったのも先輩に対しての当てつけもあるように感じます。
彼女から恨みを買った覚えは?」
私はプルプルと顔を横に振った。
席も離れているし、仕事上でもほとんど関わる機会もない。
仕事で困っていれば助け船を出すことはあっても、恨みを買うようなことをした覚えはない。
「では、単なる有森の僻みか逆恨みでしょう...」
朝比奈君は呆れたように息を吐いた。
朝比奈くんの読み通りなら、勝手に逆恨みされて男を寝取られた私は、たまったものじゃない。
「それに、有森だけじゃない...
倉木リーダーにも逃がした魚は大きかったことを知らしめて後悔させるんです。この上ない復讐だと思いますが...」
朝比奈くんはニヤリとほくそ笑んだ。
「(復讐なんて)悪趣味だわ。」
復讐と言われると、良心から途端に芽生えてきた意欲が萎えてしまう。
馬鹿だと思うかもしれないが、未だに快斗を心から憎むことができない。
それは長い間付き合ってきた情というものだろうか。
「先輩がここで他の部署に異動しまったら、倉木リーダーにまだ未練があると言っているようなものです...」
私は悔しくてグッと押し黙った。
「男というものは、未練があろうがなかろうが、別れた女はずっと自分のことが好きだという幻想を抱いてます。
その幻想を打ち砕いてやりませんか?」
朝比奈くんは私を見つめたまま、優しい声色で問いかける。
打ち砕いてやりたい...
快斗なんていなくても平気だと笑ってやりたい...
「倉木リーダーがいなくても、先輩は十分、魅力的な女性です...」
ほんと、この子は人をたぶらかす能力に長けている。
営業部にいた方が天職だったのかさえ思うほどに、私の気持ちは彼の言葉に揺れ動き始めていた。
「まあ、僕はそれだけでは済ませませんが...」
朝比奈くんはボソリとなにか呟いたが、私はそれが聞き取れず「えっ?」と聞き返した。
朝比奈くんは「いえ...何でもありません」と
にっこりと笑って誤魔化した。
この笑みに今まで何人もの女が惑わされてきたのかと思う。
そう言って、自信を含んだ声色の朝比奈君の左腕には海外ブランドの新作の腕時計が光っていた。
前に会社の慰安旅行でも、私服を見たことがあるがシンプルな服装なのに
さりげなくハイブランドのもの身に着け、嫌味に見えないお洒落が彼のセンスの良さを際立たせていた。
「先輩...僕と組めば必ずヒットさせると約束します」
その自信はどこから湧いてくるのか、でもその自信がこの子を皆惹きつけているのだと改めて気づかされる。誰でも自信のない人間より自信に満ちた人間に憧れるものだ。その証拠に、今でも営業部から朝比奈君を頼って彼に意見を求めて商品開発部にまで訪ねてくるものは多い。
「私と朝比奈君がペアを組んで、ヒット商品を生み出してあの二人に見返してやるってこと?」
「そうです。何故か有森は先輩に固執してます。悪い意味でね...
倉木リーダーを寝取ったのも先輩に対しての当てつけもあるように感じます。
彼女から恨みを買った覚えは?」
私はプルプルと顔を横に振った。
席も離れているし、仕事上でもほとんど関わる機会もない。
仕事で困っていれば助け船を出すことはあっても、恨みを買うようなことをした覚えはない。
「では、単なる有森の僻みか逆恨みでしょう...」
朝比奈君は呆れたように息を吐いた。
朝比奈くんの読み通りなら、勝手に逆恨みされて男を寝取られた私は、たまったものじゃない。
「それに、有森だけじゃない...
倉木リーダーにも逃がした魚は大きかったことを知らしめて後悔させるんです。この上ない復讐だと思いますが...」
朝比奈くんはニヤリとほくそ笑んだ。
「(復讐なんて)悪趣味だわ。」
復讐と言われると、良心から途端に芽生えてきた意欲が萎えてしまう。
馬鹿だと思うかもしれないが、未だに快斗を心から憎むことができない。
それは長い間付き合ってきた情というものだろうか。
「先輩がここで他の部署に異動しまったら、倉木リーダーにまだ未練があると言っているようなものです...」
私は悔しくてグッと押し黙った。
「男というものは、未練があろうがなかろうが、別れた女はずっと自分のことが好きだという幻想を抱いてます。
その幻想を打ち砕いてやりませんか?」
朝比奈くんは私を見つめたまま、優しい声色で問いかける。
打ち砕いてやりたい...
快斗なんていなくても平気だと笑ってやりたい...
「倉木リーダーがいなくても、先輩は十分、魅力的な女性です...」
ほんと、この子は人をたぶらかす能力に長けている。
営業部にいた方が天職だったのかさえ思うほどに、私の気持ちは彼の言葉に揺れ動き始めていた。
「まあ、僕はそれだけでは済ませませんが...」
朝比奈くんはボソリとなにか呟いたが、私はそれが聞き取れず「えっ?」と聞き返した。
朝比奈くんは「いえ...何でもありません」と
にっこりと笑って誤魔化した。
この笑みに今まで何人もの女が惑わされてきたのかと思う。