失恋タッグ
それから、食事を済ませると会社に戻ってきた私たちはエレベーターに乗り込んだ。

私は開発企画部のあるフロアはビルの7階のボタンを押す。

しかし、朝比奈君は私の上から「少し寄るところがあるので──」と10階の営業部のあるフロアのボタンを押した。

決して低くない私の背より遥かに高い
朝比奈くんとの身長差にドキッと胸が高鳴ってしまう。

「営業部に用事でもあるのっ?」

私は意識してしまった自分を誤魔化すように
口を開いた。

私の問いに朝比奈君は「まあ...」と深くは語らない。

何となくあまりそこは聞いてほしくないのかと思って私も深くは聞かなかった。

そして、7階でエレベーターは止まると、
私は「それじゃあ」と素っ気ない言葉でエレベーターを降りた。

そして、振り返ることなく歩みを進めていると、「秋月先輩っ──」と朝比奈君に呼び止められ振り返った。

「もうペアを組むことは取り消せませんから...」

朝比奈君はまだ私が信用ならないのか、念を押すように言った。

「────···分かってるわよ」

私はしつこいと言うように煩わし気な表情で言う。

「約束ですよ...」

閉まりゆく扉の中で朝比奈君はフッと満足げな笑みを浮かべた。


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