失恋タッグ
商品開発部に配属されてから、初日───

僕は新しい席について、荷物の整理をしていた。

「あなたが営業部のエースの朝比奈君？」

後ろから耳触りの良い声が降ってきて、振り返った。

そこには、首を傾けて僕の顔を覗きこむ秋月先輩の姿があった。

透き通るような白い肌───陽だまりのような綺麗な瞳が僕を見下ろしていた。

目元の泣きボクロが、男の庇護欲を掻き立てるようにその存在を主張しているかのようだった。

その美しさに一瞬、時が止まったかと思うほどに見惚れてしまう。


「······もしかして────秋月先輩ですか？」

僕は我に返り、問いかけた。

僕の言葉に秋月先輩は大きな瞳を更に大きくさせた。



「私のこと、知ってるの？」



「はい────
先輩は有名人ですから...」


営業部でも秋月先輩の噂はよく耳にする。

しかし、実物は想像していた以上にずっと綺麗な女性だった。

先輩は「有名人？そう．．．」と複雑そうに呟く。


「先輩、、これからご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いします...」

僕の畏まった挨拶に、先輩は顔をくしゃりと緩ませた。


「フフッ───
分からないことがあったら、何でも聞いて」


先輩は柔らかく微笑むと控えめな香水の香りを残して自分の席へと戻って行く。

その後ろ姿を思わず目で追ってしまう。



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