失恋タッグ
ここで引き下がらないとは、なかなか大した玉だな…

僕を落とせるという自信が彼女にはあるのだろう…

有森の首元に目を落とすと、ブルガリのダイアのネックレスがチラリと目に入る。前々から気になってはいたが、有森の身に着けているアクセサリーやバックはどれも高級品だ。どこかのご令嬢なのだろうか…。

そうならば、この過剰なまでの自信は頷ける。


「···──もし有森に気持ちが向けばね」



「じゃあ、新商品が完成するまで待ってるから。」


「約束は出来ないけどね…」


待ってると言われると、最終的に付き合わなければいけなくなるような気がしてきて、僕は約束はできないと逃げ道を作っておく。


その時、オフィスの奥にあるコピー機の前の
デスクの内線電話が鳴った。

その席は、秋月先輩の席だった。

すでに秋月先輩は退社しているので、僕は代わりに内線電話を取った。

電話の相手は別の部署の主任で、秋月先輩は帰ったことを伝えると、主任はまた明日にでも掛け直すといって電話を切った。



もし告白してきた相手が、有森ではなく秋月先輩なら···───

よく知らなかろうが、仕事の途中だろうが、二つ返事で頷いていたかもしれない。

僕は不謹慎にも告白された相手の前で別の女性のことを考えていた。

先輩は好きな男の前でどんな風に甘え···

どうな風に触れるのか···──


「朝比奈くん、顔赤いよ···」


人様の彼女に僕は何を想像しているのか──


「···───何でもない。
仕事を再開しよう」


有森はそんな僕を見て、フフッと笑う。

なんか勘違いしてるみたいだけど、まあいいかと再び仕事を再開した。
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