失恋タッグ
それから数ヶ月が経ち───
他の社員が続々と商品の開発に着手する中、僕達はまだ企画すら通っていなかった。


有森に意見を求めれば、同意ばかりで自分の意見を言うことはほとんどない。

自主性がないというよりかは、そもそも仕事に対してのヤル気がないのだろう···

 
その時点で、有森を彼女にする線は確実に消えたのだけど───

しかし、今はそんなことはどうでもいい··

今朝も上司に新商品アイデアをプレゼンをしたのだが、バツをくらいまた一から考え直しすることとなったのだ。

ペアの相手が役に立たない今、一人で考えるほかない。

僕は休憩室で一人、ベンチに座って項垂れていた。

すると、不意に誰かが隣に座ったのに気づいて顔を上げた。

「早速、壁にぶち当たったかな?新人くん?」

僕の視線の先には、からかい混じりに優しく微笑む秋月先輩の姿があった。

「別に落ち込んでた訳では···──」

先輩の前で思わず強がってしまう。

「……そう?朝比奈くんの落ち込んだ姿、初めて見たからちょっと嬉しかったのに...」

先輩は残念と言ったように、「はい」と缶コーヒーを僕の前に差し出す。


僕は「ありがとうございます...」と受け取りつつも、「だけど...嬉しいってなんですか?」と思わず抗議の目を向けた。

「だって───。朝比奈くん。仕事の飲み込み早すぎて、つまらないんだもの···」


つまんないって···───


僕は呆れたように息を吐いた。

しかし、子どもみたいに口を尖らせて言う先輩が可愛くて怒る気は削がれてしまう。

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