失恋タッグ
しかし、いくら叔父さんが承諾してくれたとしても、秋月先輩が部署異動してしまったら元も子もない。

僕はランチに出掛けようとした秋月先輩を掴まえると、会社から少し離れたカフェに連れ出した。

会社の者に聞かれることを避けたかったからだ。

注文したステーキセットが目の前に出されて
僕は緊張を落ち着かせるように食べ始めた。

これから、倉木リーダーと有森の話をしなければならない。

それは秋月先輩の出来て間もない傷口に塩を塗り込む話なのだ。

いつも優しく励ましてくれた秋月先輩の苦痛に満ちた表情を前に僕は平静を保つことが出来るだろうか...。

そう考えると、飲み込んだ肉が喉につっかえたように喉を通らない。

しかし、元々、僕は緊張が顔に出ないタイプだ。秋月先輩は、警戒はしているものの、僕の心の内には全く気づいてないようだった。

そして、先輩は僕の心配をよそに、早く話さないなら帰ると言い出したのだ。


僕は仕方なく話を切り出した。

“僕とタッグを組んで復讐しませんか?”


僕の問いかけに秋月先輩は目をまん丸くさせると「復讐?!」と周りにも響く声を上げた。

秋月先輩は自分から勝手に出た声に恥ずかしそうに辺りも見渡している。

耳まで赤くしながら、ウーロン茶を飲んで誤魔化す秋月先輩が可愛くて僕は思わず笑ってしまった。
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