失恋タッグ
「何を拗ねてるの?」


不貞腐れたような態度の朝比奈君に私は問いかけた。


「別に拗ねていません。」


朝比奈くんは少し投げやりな態度で言う。


「なんだか子供みたいね..」


私は思わずポツリと呟いた。


その瞬間、朝比奈くんは酷く傷ついた顔をした。


「先輩にだけは、その言葉を言ってほしくないんですが···──」



「あ···っ·····ごめん」


子どもっぽいと言われて、喜ぶものはいないだろう。特に男性に対してはかなり失礼な言葉だったかもしれない。


「少し言い過ぎたわ。
子どもみたいだなんて本当に思ってるわけじゃないのよっ。」


いつも涼しい顔をしている朝比奈くんの
傷ついた表情に私は焦ってしまう。


「ほら、朝比奈君は同期の子達より大人びてるし、まだ若いのに皆から頼りにされてるのは凄いと思うわ。」


そして、どうにか彼の機嫌を取るべく、必死になってフォローする。

しかし朝比奈くんはまだ怒っているのか、私の顔をじっと見つめたまま、うんともすんとも言わない。

まだ足りないのだろうか...

「それに、俳優だって通用する顔立ちしてるし···
朝比奈くんがうちに異動してきたときは、皆彼氏にしたいって騒いでたのよ。」


「それは···──
秋月先輩も僕のことをそう思ってるということですか?」


いつの間にか彼はいつもの飄々とした表情に薄っすら笑みを浮かべている。


「えっ、わたし?」


思わぬ方向から言葉の矢が飛んできて
私は戸惑ってしまう。
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