失恋タッグ
店員の年配の女性がショーケースから大福を取り出し、箱に詰め出した。

私は待ちきれなくて、その時間さえも惜しいと思う。

「ここのイチゴ大福は何度食べても美味しいですよね。
イチゴの種類はなんですか?」

私はレジを打つ年配の女性に向かって問いかけた。

この店のイチゴ大福は酸味と甘みのバランスが絶妙なのだ。

「ありがとうございます。そう言って頂いて有難いですね。
うちの苺は静岡の契約農家から取り寄せてるんですよ。
時期によって苺は酸味が変わってきますから、その都度、
うちの主人が餡子の甘さを調整しています。」

「なるほど……。だからいつ食べても、酸味と甘みのバランスが
ちょうどいいんですね……。勉強になります」

私がわざわざ丁寧に答えてくれた店員さんに向けて、ぺこりと頭を下げた。


「あなた、以前にも何度か買いに来てくれたわよね?
綺麗な方だったから、覚えてるわ。
苺大福サービスでもう1つ入れといたから、食べてね」

年配の女性は他の客に聞こえないように小声で言いながらフフっと笑う。
紙袋を差し出した。

私は「ありがとうございます。」と受け取りながら目を細めた。


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