失恋タッグ
「先輩は、いつもあんな風に店員に質問してるんですか?」

朝比奈君は運転席でイチゴ大福を頬張りながら問いかけた。

「毎回ではないけど、話しやすそうな店員さんだったりすると
つい聞いちゃうのよね。商品開発の参考にもなるし、職業病かしら……」


私もイチゴ大福を一つ摘まんだ。

そして、朝比奈君が見ていることも
忘れて大きな口で齧り付いた。

口の中に入れた途端、苺の果汁がジュワーッと広がり、
餡子とお餅の甘みが合わさって思わず満足げに目を細めた。

その瞬間、朝比奈君が「ブハっ」と吹き出すように笑った。

私は「なに…?!」と朝比奈君に顔を向けた。

朝比奈君は私の顔を見て「……クツ……口の周りに粉が沢山ついてます…」
再びクツクツと笑いだした。

私はすぐにバックからハンカチを取り出すと
口の周りに着いた粉を拭った。


「いや……、すみません。
なんだか先輩が子どもみたいに見えて……」

そう言って、笑いを堪えるようにペットボトルの水を飲む
朝比奈君に私はムッと顔を顰めた。

「先輩は、もっと大人な女性かと思ってました……」

そう付け加える朝比奈君は、この前、私が子供みたいと言った仕返しをしているのだろうか...。

だけど、そう言えば昔、快斗と付き合い始めたころにも
そんなことを言われたような気がする。

“柚葉は意外と子供みたいだな”

そう言って、笑う快斗を思い出して私の胸がチクリと痛んだ。
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