again
 美緒は気付かなかった。心のどこかで、自分が特別扱いされている、と過信していたのだ。

 教師と生徒の恋愛。それは決して許されないことだとわかっていた。
 だから……

 卒業式が終わった後、美緒は繁田先生を呼び出し告白した。
 結果は……

 玉砕。


 当時の美緒は、まさか、という思いしかなかったが、今となれば自分のその未熟さに羞恥を覚える。

『森山のことを、そんなふうには見れない』

 繁田先生は、はっきりとそう言った。



 幹事の尚美が、二次会はどうするかと皆に聞いて回っていた。

「先生はどうされますか?」

 美緒は尋ねた。

「俺はここまでにするよ。あとは若いもんで楽しんで」

 繁田先生は優しく微笑んだ。
 二次会には佑樹も参加するようだった。おそらくもう一度絡まれると面倒なことになりかねない、と判断した美緒は、「子供が待ってるから」とやんわり断った。実際は、家で母親が見てくれている。

 会場となっていたレストランの前で、二次会参加組と不参加組に分かれて、不参加組はそこからタクシーと電車に分かれて解散した。
 皆を見送り、気付けば美緒と繁田先生の二人になっていた。すると、繁田先生の口から思いがけない言葉が飛び出した。

「急がないなら、飲み直さないかい? 帰りは責任を持って自宅まで送り届けるから」

 美緒は返す言葉を探しあぐねた。
 そして……

「先生がよければ」

 そう返した。
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