3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
こんなの他の方から見れば全然大した話ではないのかもしれないけど、私にとってみれば大きな一歩に思える。

そして、ようやく専属バトラーとして認めて頂けたような気がして、胸がいっぱいになる。

心の奥底からじんわりと込み上がってくる熱い気持ち。

温かく、フワフワと宙に浮くような、とても穏やかな気持ち。


そんな想いを抱えながら、私は出勤される楓様の後ろ姿を消え行くまで見届けた。



……また、お会いしたい。

今度はもっとご満足して頂けるように、尽くしていきたい。

それから、もっと笑顔が見れるように……。


「私はいつでも、楓様がいらっしゃるのをお待ちしておりますので」

そう強く願いを込めて、私は既に姿が見えなくなってしまった楓様に届くよう、穏やかに吹く風に乗せて、ぽつりと小さく呟いたのだった。
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