3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
◇◇◇
__それから数日後、ついにその日はやってきた。
私は何とか業務に専念するよう心掛けてはみるものの、刻々と時間が過ぎていく毎に緊張感は増していき、危うく何度かミスをしてしまいそうになる程集中出来なかった。
一方瀬名さんはというと、相変わらずスマートな身のこなしで業務を淡々とこなしていき、今日もお客様に素敵な笑顔を振り撒いている。
そんな姿に見惚れながら、その彼と後数時間もすれば一緒にお食事が出来ると思うと、再び心拍数が上昇してきてしまう。
これではまたミスをしてしまいそうなので、私はなるべく瀬名さんの姿を視界に映さないよう我武者羅に働いた。
「天野さん、待たしてごめんね!」
そして、約束の時間を迎え、何とか業務を終わらせた私は気もそぞろでホテルのロビーで時間を潰していると、黒いトレンチコートを着た瀬名さんが小走りでこちらに向かってきた。
「い、いえ!私もさっき着いたばかりなので気にしないで下さい」
この前のランチ会がいい予行演習になったのであの時程の緊張感はないけど、それでも高鳴る鼓動は変わらずなので、声が少し震えてしまう。
「とりあえず車出してくるから、入り口前で待ってて」
そう言うと、瀬名さんは踵を返して職員用の地下駐車場へと向かっていった。
私は“車”という単語に大きく反応してしまい、そこそこだった緊張感が急激に上昇し始め、瀬名さんが去った後も暫くその場から動けなかった。
当ホテルは駅からも近いので、てっきり電車で行くものかと思っていたため、完全に油断していた私。
けど、男性と車に乗るのは、別にこれが初めてではない。
帰りが遅くなって上司や先輩に送って頂いたことは何度かあるし、同系列のホテルに応援で向かう時も送り迎えをして頂いたことだってある。
だから、こんなに焦る必要なんてどこにもないはずなのだけど……。
相手が瀬名さんだと思うと、そんな免疫はものの見事に吹っ飛んでしまった。
それから程なくして、ホテルの入り口前で待っていると、紺色のハッチバック車が前方で停まり、自動で開いた助手席の窓から運転席に座っていらっしゃる瀬名さんが手招きしている姿が見えた。
私は生唾を飲み込み、恐る恐る助手席の扉を開く。
車内には余計な物など一切置いてなく、とても清潔に保たれている上に、石鹸のような仄かにいい香りが鼻を掠めてきた。
正しく瀬名さんのイメージにピッタリと合った車内の様子に私の心拍数は益々上昇していく。
「し、失礼します」
けど、それを悟られないように私は笑顔で軽く一礼すると、空いている助手席へと座りシートベルトを締めた。
__それから数日後、ついにその日はやってきた。
私は何とか業務に専念するよう心掛けてはみるものの、刻々と時間が過ぎていく毎に緊張感は増していき、危うく何度かミスをしてしまいそうになる程集中出来なかった。
一方瀬名さんはというと、相変わらずスマートな身のこなしで業務を淡々とこなしていき、今日もお客様に素敵な笑顔を振り撒いている。
そんな姿に見惚れながら、その彼と後数時間もすれば一緒にお食事が出来ると思うと、再び心拍数が上昇してきてしまう。
これではまたミスをしてしまいそうなので、私はなるべく瀬名さんの姿を視界に映さないよう我武者羅に働いた。
「天野さん、待たしてごめんね!」
そして、約束の時間を迎え、何とか業務を終わらせた私は気もそぞろでホテルのロビーで時間を潰していると、黒いトレンチコートを着た瀬名さんが小走りでこちらに向かってきた。
「い、いえ!私もさっき着いたばかりなので気にしないで下さい」
この前のランチ会がいい予行演習になったのであの時程の緊張感はないけど、それでも高鳴る鼓動は変わらずなので、声が少し震えてしまう。
「とりあえず車出してくるから、入り口前で待ってて」
そう言うと、瀬名さんは踵を返して職員用の地下駐車場へと向かっていった。
私は“車”という単語に大きく反応してしまい、そこそこだった緊張感が急激に上昇し始め、瀬名さんが去った後も暫くその場から動けなかった。
当ホテルは駅からも近いので、てっきり電車で行くものかと思っていたため、完全に油断していた私。
けど、男性と車に乗るのは、別にこれが初めてではない。
帰りが遅くなって上司や先輩に送って頂いたことは何度かあるし、同系列のホテルに応援で向かう時も送り迎えをして頂いたことだってある。
だから、こんなに焦る必要なんてどこにもないはずなのだけど……。
相手が瀬名さんだと思うと、そんな免疫はものの見事に吹っ飛んでしまった。
それから程なくして、ホテルの入り口前で待っていると、紺色のハッチバック車が前方で停まり、自動で開いた助手席の窓から運転席に座っていらっしゃる瀬名さんが手招きしている姿が見えた。
私は生唾を飲み込み、恐る恐る助手席の扉を開く。
車内には余計な物など一切置いてなく、とても清潔に保たれている上に、石鹸のような仄かにいい香りが鼻を掠めてきた。
正しく瀬名さんのイメージにピッタリと合った車内の様子に私の心拍数は益々上昇していく。
「し、失礼します」
けど、それを悟られないように私は笑顔で軽く一礼すると、空いている助手席へと座りシートベルトを締めた。