3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「えー、もう美守先輩それ完全に恋する乙女状態じゃないですかー。いいなあー、楽しそうで」
そんな私を羨望の眼差で見つめてくる桜井さん。
その視線がとても恥ずかしくて、益々頬が赤くなっていくのを感じながらも、最後に言われた言葉が引っ掛かってしまい、私は段々と意気消沈してしまう。
「そんなことないです。以前もお話ししましたが、楓様は婚約者がいらっしゃいますし、結婚話も進んで行くみたいなので……。まあ、政略結婚というものだそうですが……」
これが真っ当なお相手なら、きっとこの気持ちも、もっと違っていたのかもしれない。
楓様をしっかりと愛して下さる方であれば諦めも付くし、おそらくここまで深入りなんかしなかった。
けど、この結婚では結局楓様はずっと闇の中に堕ちたままな気がして、どうにも我慢出来ない。
「それなら、奪っちゃえばいいじゃないですか?」
すると、またもや心の中を見透かされてしまったのかという絶妙なタイミングで、さらっとさも当たり前のような口振りで爆弾発言をしてきた桜井さんに、私は目を丸くして彼女を見た。
「な、何を仰っているのですか?れ、恋愛経験皆無の私が、昼ドラさながらのハイレベルな真似なんて……」
「美守先輩は自分に自信が無さ過ぎですよ。恋愛結婚じゃないんですよね?それならば、先輩が本気で挑めばきっと東郷様レベルでも堕とせますから!」
そんな無責任な……。
なんて、半ば呆れ気味に桜井さんの話を聞いてはいるものの、心の奥底では満更でもない気持ちが蠢いている。
私が、楓様の闇を振り払う事が出来れば。
そう思った途端、その気持ちは見て見ぬ振りが出来ない程に膨れ上がってきて、私は何て身の程知らずなことを考えているのだろうと冷や汗が流れ始める。
その時、突然業務用携帯が鳴り響き、私は慌ててバックから取り出して見てみると、そこに表示されている名前に思わず表情が緩んでしまう。
「天野様。少し長い話になるのですが、今よろしいですか?」
通話ボタンを押して応答すると、電話越しから聞こえてくる白鳥様の感情がこもっていない単調な声。
けど、今ではこの声も段々と好きになり始めてきて、私は終始笑顔を崩さず二つ返事をする。
「確か今度の土曜日ってお休みですよね?ご予定ありますか?」
もしかしたら、また楓様のご宿泊の話なのかもしれないと期待していたところ、全くの予想だにしていなかった白鳥様の質問に、私は一瞬きょとんとした。
「いえ、今のところ特に何もないですが……」
そして、何故白鳥様が私のシフトを把握していらっしゃるのかという疑問を抱きながら、おずおずと答える。
「それでは、もし可能であればその日一日楓様の予定に付き合って頂いても宜しいですか?」
すると、まさかのこれまた予想を遥かに超えた白鳥様のお願いに、危うく手に持っていた携帯を落としそうになった。
「そそそそれは一体、どどどういう事なのでしょうか!?」
次第に鼓動が早くなっていく中、私は動揺を隠すことが出来ず、声を震わせながら理由を尋ねる。
「その日に以前自分が開発プロジェクトに加わったショッピングモールを視察したいそうなんです。まあ、正式的なものではなく、あくまで個人的なものですが。なので、休暇の日に行くそうですが、出来れば若い女性の観点も欲しいとのことでして……」
何ということでしょう。
お休みの日でも休息せずにお仕事に専念しているなんて。
私は相変わらずの楓様の働きぶりに圧倒されながらも、何故私にその白羽の矢が立ったのか頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、引き続き白鳥様の話に耳を傾ける。
「私も当然ながらに同行する予定でしたが、その日は急遽外せない用事が出来てしまいまして。他の社員に頼むのも良いのですが、楓様相手だと若い女性社員は色目で見てしまうので、まともな視察にならない気がするのです」
……確かに。
なんて、妙に納得してしまった私は、その場で思わず頷いてしまう。
「だから、専属バトラーの天野様なら適任かと思った次第です。宿泊外の事で、しかも休暇中のところ無理を申し上げているのは百も承知なのですが……」
未だ信じがたい話に頭は真っ白状態ではあるが、少し困ったような声色で仰られた白鳥様の頼み事を当然断ろうだなんて微塵も思わない。
「私でお役に立てるのであれば、是非ご同行させて下さい!」
なので、携帯を強く握りしめて、つい声に力が込もった状態で私は食い気味に同意した。
そんな私を羨望の眼差で見つめてくる桜井さん。
その視線がとても恥ずかしくて、益々頬が赤くなっていくのを感じながらも、最後に言われた言葉が引っ掛かってしまい、私は段々と意気消沈してしまう。
「そんなことないです。以前もお話ししましたが、楓様は婚約者がいらっしゃいますし、結婚話も進んで行くみたいなので……。まあ、政略結婚というものだそうですが……」
これが真っ当なお相手なら、きっとこの気持ちも、もっと違っていたのかもしれない。
楓様をしっかりと愛して下さる方であれば諦めも付くし、おそらくここまで深入りなんかしなかった。
けど、この結婚では結局楓様はずっと闇の中に堕ちたままな気がして、どうにも我慢出来ない。
「それなら、奪っちゃえばいいじゃないですか?」
すると、またもや心の中を見透かされてしまったのかという絶妙なタイミングで、さらっとさも当たり前のような口振りで爆弾発言をしてきた桜井さんに、私は目を丸くして彼女を見た。
「な、何を仰っているのですか?れ、恋愛経験皆無の私が、昼ドラさながらのハイレベルな真似なんて……」
「美守先輩は自分に自信が無さ過ぎですよ。恋愛結婚じゃないんですよね?それならば、先輩が本気で挑めばきっと東郷様レベルでも堕とせますから!」
そんな無責任な……。
なんて、半ば呆れ気味に桜井さんの話を聞いてはいるものの、心の奥底では満更でもない気持ちが蠢いている。
私が、楓様の闇を振り払う事が出来れば。
そう思った途端、その気持ちは見て見ぬ振りが出来ない程に膨れ上がってきて、私は何て身の程知らずなことを考えているのだろうと冷や汗が流れ始める。
その時、突然業務用携帯が鳴り響き、私は慌ててバックから取り出して見てみると、そこに表示されている名前に思わず表情が緩んでしまう。
「天野様。少し長い話になるのですが、今よろしいですか?」
通話ボタンを押して応答すると、電話越しから聞こえてくる白鳥様の感情がこもっていない単調な声。
けど、今ではこの声も段々と好きになり始めてきて、私は終始笑顔を崩さず二つ返事をする。
「確か今度の土曜日ってお休みですよね?ご予定ありますか?」
もしかしたら、また楓様のご宿泊の話なのかもしれないと期待していたところ、全くの予想だにしていなかった白鳥様の質問に、私は一瞬きょとんとした。
「いえ、今のところ特に何もないですが……」
そして、何故白鳥様が私のシフトを把握していらっしゃるのかという疑問を抱きながら、おずおずと答える。
「それでは、もし可能であればその日一日楓様の予定に付き合って頂いても宜しいですか?」
すると、まさかのこれまた予想を遥かに超えた白鳥様のお願いに、危うく手に持っていた携帯を落としそうになった。
「そそそそれは一体、どどどういう事なのでしょうか!?」
次第に鼓動が早くなっていく中、私は動揺を隠すことが出来ず、声を震わせながら理由を尋ねる。
「その日に以前自分が開発プロジェクトに加わったショッピングモールを視察したいそうなんです。まあ、正式的なものではなく、あくまで個人的なものですが。なので、休暇の日に行くそうですが、出来れば若い女性の観点も欲しいとのことでして……」
何ということでしょう。
お休みの日でも休息せずにお仕事に専念しているなんて。
私は相変わらずの楓様の働きぶりに圧倒されながらも、何故私にその白羽の矢が立ったのか頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、引き続き白鳥様の話に耳を傾ける。
「私も当然ながらに同行する予定でしたが、その日は急遽外せない用事が出来てしまいまして。他の社員に頼むのも良いのですが、楓様相手だと若い女性社員は色目で見てしまうので、まともな視察にならない気がするのです」
……確かに。
なんて、妙に納得してしまった私は、その場で思わず頷いてしまう。
「だから、専属バトラーの天野様なら適任かと思った次第です。宿泊外の事で、しかも休暇中のところ無理を申し上げているのは百も承知なのですが……」
未だ信じがたい話に頭は真っ白状態ではあるが、少し困ったような声色で仰られた白鳥様の頼み事を当然断ろうだなんて微塵も思わない。
「私でお役に立てるのであれば、是非ご同行させて下さい!」
なので、携帯を強く握りしめて、つい声に力が込もった状態で私は食い気味に同意した。