3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
お部屋に戻ってからは、上着を脱いで早々に書類を広げ始めたので、私はお邪魔にならないよう身の回りを整理した後は直ぐに退出した。
基本は仕事の延長線でこちらをご利用するので、本来おもてなしを出来るような時間なんてほぼ皆無だけど、その合間でもリラックス出来るようなものはないかと、以前から色々模索していた。
そこで浮かんだのが、夕食時はノンカフェインのハーブティーをご用意すること。
夜は大体あのシャンパンを飲んでいらっしゃるけど、毎回お酒ばかりだとやはり健康面が心配なので、何か違う飲み物をお出しすればお酒を飲む量も少しは減るのではないかと。
そう思って私はカフェテリアの方々にリラックス効果が高いおすすめのブレンドティーを聞いていくつか準備してみた。
もはや、これはおもてなしというよりは、ただのお節介でしかないのかもしれないけど、とりあえず手当たり次第試してみて、楓様がお気に召されるものを見つけていこうと私は気合を入れる。
「楓様、お酒の前にハーブティーはいかがですか?」
普段時間が遅い時の夕食時はつまめる程度のオードブルといつものシャンパンのセットであるけど、果たして用意したお茶を飲んで下さるのか、私は少し緊張しながら恐る恐る楓様に尋ねてみた。
「別にどっちでも」
けど、楓様はさほど興味を示さず、視線は書類に向けたまま適当に相槌をなされ、なかなかの薄い反応に一瞬どうしようかと躊躇うも、とりあえずお出しするだけしてみようと、私は黙々とハーブティーを準備してみる。
「どうぞ。お節介なのは分かっていますが、暫しの休憩も必要かと思いますよ」
ただの自己満足で終わってしまうかもしれなけど、それでもと。私は適温で淹れたお茶をテーブル脇にそっと置いてみた。
「それじゃあ、美守も飲めば?暫しの休息も必要なんだろ?」
すると、まさかのおうむ返しをされるとは思ってもみなかったので、私は驚きのあまり目を丸くする。
しかも、こちらに来るように顎で指してくる仕草に、心拍数が一気に上がり、顔が熱くなってくる。
「……は、はい。で、では、し、失礼します」
とりあえず、仕事中ではあるけれど、またとない機会だし、少しの間だけであればと思い、私は狼狽えながらも高鳴る鼓動を抑えてゆっくりと頷いた。
楓様の隣に座るのはこれが初めてではないけれど、今回は完全に意識がある状態なので、果たして平静を保っていられるのか不安になりながら、自分のお茶を用意して、緊張しながら楓様と少し離れた位置に座る。
湯気立つハーブティーを手にもち、兎に角一旦気持ちを落ち着かせようと、早速一口飲んでみる。
確か、茶葉はラベンダーとレモンピール、ローズヒップやオレンジブロッサムなどなど。疲労回復やストレス軽減に良いものを色々調べて厳選したので、一口飲んだだけでもその効果は体に染み渡り、段々と気持ちが和らいでくる。
「……ああ、美味しいです」
そして、茶葉の苦味が少なく、ふんわりとミントの爽やかさが口の中で広がり、すっきりとした味に仕上がっていて、我ながら良いものを選んだと自負しながらつい感嘆の声を漏らしてしまう。
「気分が落ち着きますよ。楓様も是非飲んでみてはいかがですか?」
それから、彼にもこの美味しさを分かって欲しくて、私は笑顔で促してみる。
その時、突然楓様は肩が触れ合う程に私との距離を詰めてきて、不意を突かれた私は茶葉の効果が一気に吹き飛び、目を大きく見開きながら、まるで壊れたロボットのようにぎこちない動きで直ぐ近くに座る楓様の方へと視線を向けた。
「なんでそんな離れて座るんだよ?もっと近くに来れば良いだろ?」
楓様はそんな硬直する私の耳元に顔を近付け、吐息混じりの甘い声でそっと囁く。
耳から感じた楓様の熱い息と声に私はゾクゾクと体が震えるような感覚に陥り、マグカップを持つ手が小刻みに震え出す。
「かかか楓様!?ま、また私をからかっていらっしゃるのですか!?」
今まで何度かそんな目には遭ってきたけど、ここまで密着されたことはなかったので、私は信じられない状況に頭が混乱し始め、顔を真っ赤にしながら抗議する。
「ああ、そうだよ。美守のその反応、たまに見たくなるんだ」
けど、そんな私の気持ちを弄ぶように、楓様は真顔で残酷なことをさらっと言って退けた後、何故かこちらをじっと凝視してくる。
今までにないくらいの至近距離に、鼓動がうるさいぐらい鳴り響く中、私は訳が分からず狼狽えながら、一向に黙ったままの楓様に何か言葉を掛けようとした時だった。
基本は仕事の延長線でこちらをご利用するので、本来おもてなしを出来るような時間なんてほぼ皆無だけど、その合間でもリラックス出来るようなものはないかと、以前から色々模索していた。
そこで浮かんだのが、夕食時はノンカフェインのハーブティーをご用意すること。
夜は大体あのシャンパンを飲んでいらっしゃるけど、毎回お酒ばかりだとやはり健康面が心配なので、何か違う飲み物をお出しすればお酒を飲む量も少しは減るのではないかと。
そう思って私はカフェテリアの方々にリラックス効果が高いおすすめのブレンドティーを聞いていくつか準備してみた。
もはや、これはおもてなしというよりは、ただのお節介でしかないのかもしれないけど、とりあえず手当たり次第試してみて、楓様がお気に召されるものを見つけていこうと私は気合を入れる。
「楓様、お酒の前にハーブティーはいかがですか?」
普段時間が遅い時の夕食時はつまめる程度のオードブルといつものシャンパンのセットであるけど、果たして用意したお茶を飲んで下さるのか、私は少し緊張しながら恐る恐る楓様に尋ねてみた。
「別にどっちでも」
けど、楓様はさほど興味を示さず、視線は書類に向けたまま適当に相槌をなされ、なかなかの薄い反応に一瞬どうしようかと躊躇うも、とりあえずお出しするだけしてみようと、私は黙々とハーブティーを準備してみる。
「どうぞ。お節介なのは分かっていますが、暫しの休憩も必要かと思いますよ」
ただの自己満足で終わってしまうかもしれなけど、それでもと。私は適温で淹れたお茶をテーブル脇にそっと置いてみた。
「それじゃあ、美守も飲めば?暫しの休息も必要なんだろ?」
すると、まさかのおうむ返しをされるとは思ってもみなかったので、私は驚きのあまり目を丸くする。
しかも、こちらに来るように顎で指してくる仕草に、心拍数が一気に上がり、顔が熱くなってくる。
「……は、はい。で、では、し、失礼します」
とりあえず、仕事中ではあるけれど、またとない機会だし、少しの間だけであればと思い、私は狼狽えながらも高鳴る鼓動を抑えてゆっくりと頷いた。
楓様の隣に座るのはこれが初めてではないけれど、今回は完全に意識がある状態なので、果たして平静を保っていられるのか不安になりながら、自分のお茶を用意して、緊張しながら楓様と少し離れた位置に座る。
湯気立つハーブティーを手にもち、兎に角一旦気持ちを落ち着かせようと、早速一口飲んでみる。
確か、茶葉はラベンダーとレモンピール、ローズヒップやオレンジブロッサムなどなど。疲労回復やストレス軽減に良いものを色々調べて厳選したので、一口飲んだだけでもその効果は体に染み渡り、段々と気持ちが和らいでくる。
「……ああ、美味しいです」
そして、茶葉の苦味が少なく、ふんわりとミントの爽やかさが口の中で広がり、すっきりとした味に仕上がっていて、我ながら良いものを選んだと自負しながらつい感嘆の声を漏らしてしまう。
「気分が落ち着きますよ。楓様も是非飲んでみてはいかがですか?」
それから、彼にもこの美味しさを分かって欲しくて、私は笑顔で促してみる。
その時、突然楓様は肩が触れ合う程に私との距離を詰めてきて、不意を突かれた私は茶葉の効果が一気に吹き飛び、目を大きく見開きながら、まるで壊れたロボットのようにぎこちない動きで直ぐ近くに座る楓様の方へと視線を向けた。
「なんでそんな離れて座るんだよ?もっと近くに来れば良いだろ?」
楓様はそんな硬直する私の耳元に顔を近付け、吐息混じりの甘い声でそっと囁く。
耳から感じた楓様の熱い息と声に私はゾクゾクと体が震えるような感覚に陥り、マグカップを持つ手が小刻みに震え出す。
「かかか楓様!?ま、また私をからかっていらっしゃるのですか!?」
今まで何度かそんな目には遭ってきたけど、ここまで密着されたことはなかったので、私は信じられない状況に頭が混乱し始め、顔を真っ赤にしながら抗議する。
「ああ、そうだよ。美守のその反応、たまに見たくなるんだ」
けど、そんな私の気持ちを弄ぶように、楓様は真顔で残酷なことをさらっと言って退けた後、何故かこちらをじっと凝視してくる。
今までにないくらいの至近距離に、鼓動がうるさいぐらい鳴り響く中、私は訳が分からず狼狽えながら、一向に黙ったままの楓様に何か言葉を掛けようとした時だった。