3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
私は暫く呆然としながら、白鳥様の後ろ姿を見送る。
”楓様”ではなく、“楓君”と仰った呼び名。
それだけで分かった、白鳥様に託された想い。
秘書としてじゃなくて、同期として楓様を心配する気持ち。
それはまるで、瀬名さんが私を気に掛けて下さるのと同じようで……。
そんな白鳥様の想いに応えたくて、私は楓様のビジネスバッグを抱え込んで強く抱き締める。
この状態で自分がどこまで出来るのか分からない。また拒絶されるかもしれないし、瀬名さんはああ言って下さいましたが、もしかしたら、バトラー解任を言い渡されることもあり得るかもしれない。
けど、白鳥様が私に託してきたのなら、もう嫌がられてもいいし、どうにでもなってしまえばいい。
もともと一筋縄ではいかないお方なのだから、こんなことで恐れていては、何も動けない。
だから、私に出来ることは、今もこれからも、自分の思うがままに行動していくしかない。
そう思った瞬間、信じられない程に今までの不安は掻き消されていき、今残っているのはただ楓様を愛しいと思う気持ちだけ。
その思いに身を任せ、私は早く彼の元へと向かう為に勢いよくその場から駆け出した。
それから3121号室へと辿り着き部屋の中へと入ると、楓様は辛そうに息をしながらソファーに座り、何をするわけでもなく、ただ一点を見つめていらっしゃった。
「楓様、とりあえず早くパジャマに着替えて寝てください」
私はとにかく看病するために、急いで駆け寄り彼の隣に座ると、失礼も承知の上で着ている上着を脱がそうと手を伸ばした時だった。
「構うな。あとは一人で出来るからお前はさっさと出てけ」
やはりあの時と変わらず思いっきり拒絶されてしまい、私は傷付きながらも、ここで怯んではいけないと、歯を食いしばる。
「嫌です。何故なのか理由は分かりませんが、私を遠ざけたいのなら、先ずは体調を万全にしてからにして下さい。バトラーである以前にホテルマンとして、お客様をこのまま放置するなんて言語道断ですから!」
だから、当然の理念を思いっきり突きつけて、私は精一杯の抵抗を見せた。
そんな私の気迫に根負けしたのか。楓様は暫く無言のまま私を見つめると、軽く舌打ちをしてそっぽを向いてしまう。
それを承諾と捉えた私は、そのまま構わず楓様の上着を脱がせてパジャマを用意し始める。
楓様もそれ以降は何も言わず、黙って大人しく着替えを始めて、覚束ない足取りで寝室へと向かって行った。
”楓様”ではなく、“楓君”と仰った呼び名。
それだけで分かった、白鳥様に託された想い。
秘書としてじゃなくて、同期として楓様を心配する気持ち。
それはまるで、瀬名さんが私を気に掛けて下さるのと同じようで……。
そんな白鳥様の想いに応えたくて、私は楓様のビジネスバッグを抱え込んで強く抱き締める。
この状態で自分がどこまで出来るのか分からない。また拒絶されるかもしれないし、瀬名さんはああ言って下さいましたが、もしかしたら、バトラー解任を言い渡されることもあり得るかもしれない。
けど、白鳥様が私に託してきたのなら、もう嫌がられてもいいし、どうにでもなってしまえばいい。
もともと一筋縄ではいかないお方なのだから、こんなことで恐れていては、何も動けない。
だから、私に出来ることは、今もこれからも、自分の思うがままに行動していくしかない。
そう思った瞬間、信じられない程に今までの不安は掻き消されていき、今残っているのはただ楓様を愛しいと思う気持ちだけ。
その思いに身を任せ、私は早く彼の元へと向かう為に勢いよくその場から駆け出した。
それから3121号室へと辿り着き部屋の中へと入ると、楓様は辛そうに息をしながらソファーに座り、何をするわけでもなく、ただ一点を見つめていらっしゃった。
「楓様、とりあえず早くパジャマに着替えて寝てください」
私はとにかく看病するために、急いで駆け寄り彼の隣に座ると、失礼も承知の上で着ている上着を脱がそうと手を伸ばした時だった。
「構うな。あとは一人で出来るからお前はさっさと出てけ」
やはりあの時と変わらず思いっきり拒絶されてしまい、私は傷付きながらも、ここで怯んではいけないと、歯を食いしばる。
「嫌です。何故なのか理由は分かりませんが、私を遠ざけたいのなら、先ずは体調を万全にしてからにして下さい。バトラーである以前にホテルマンとして、お客様をこのまま放置するなんて言語道断ですから!」
だから、当然の理念を思いっきり突きつけて、私は精一杯の抵抗を見せた。
そんな私の気迫に根負けしたのか。楓様は暫く無言のまま私を見つめると、軽く舌打ちをしてそっぽを向いてしまう。
それを承諾と捉えた私は、そのまま構わず楓様の上着を脱がせてパジャマを用意し始める。
楓様もそれ以降は何も言わず、黙って大人しく着替えを始めて、覚束ない足取りで寝室へと向かって行った。