3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「38度5分。このまま熱が下がらなければ明日お医者様をお呼びしますね」
事務室へと戻り、私は救急セットを持ってきてベットで仰向けになっている楓様に体温を計らせると、予想以上の高熱に少し驚いてしまう。
「その必要はない。体の限界を迎えた時に極たまにあるんだよ。寝てればそのうち治る」
そんな心配を他所に、楓様はぶっきらぼうにそう答えると、私に背を向ける形で横向けになった。
とことん避けられている状態が続き、何だかショックを通り越して、段々とそれに慣れ始めてきた私は、小さく息を吐くと、一先ず用意したスポーツ飲料水をベット脇にあるシェルフに置いた。
「分かりました。とりあえず、これからお粥と解熱剤をお持ちしますので、それまで暫くお休みになってて下さいね」
それから、一礼をして部屋から退出すると、私は厨房に行き病人用の食事を用意してもらったり、氷枕やらタオルやらを準備したりで、兎に角、余計な考えは払拭しながら楓様の看病に徹することにした。
その後も楓様の顔色はどんどんと悪くなっていき、また少し熱が上がり始めたのか、体は先程よりも更に熱くなり、呼吸も益々浅くなってくる。
何とかお粥は食べて頂き、その内薬が効いてくれば少しは落ち着くのかもしれないけど、それまで私は作った氷枕を敷いたり、じんわりと滲む汗を拭き取ったり、スポーツ飲料水を飲ませたりと。
楓様が眠りにつくまで付きっきりで看病に励む。
これが疲れによるものだとは仰っていたけど、薬を飲んでも熱はそこまで下がる様子はなく、心配で気が気でない私は、眠りを妨げないように、夜通しで一定期間楓様の様子を見に行くことにしたのだった。