3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
何畳あるのか分からない程広く、大きな窓が全面に張り巡らされ、大理石の床が敷き詰められた汚れ一つない綺麗なリビングへと足を運ぶと、そこには親父と、親父と同じくらいの年代の女と、俺より少し年上のメガネを掛けた男子児童が長細いダイニングテーブルに向かい合って座っていた。
この人達が一体誰なのか、状況が分からないまま呆然と立ち尽くしていると、席に座るよう促され、俺は恐る恐る親父の隣に座る。
その瞬間、女と子供の視線が槍のように突き刺さり、そこには憎悪が感じ取られ、一瞬にして戸惑いと恐怖が襲い掛かった。
そうして訳が分からないまま暫く沈黙が続き、その空気は張り詰めていて、子供ながらに逃げたい程息苦しく、この人達が俺を歓迎しているとは到底思えなかった。
「……東郷楓。それがお前の名前で、今日から東郷家の人間になる。だから、これからはこちらの教育方針に従ってもらうぞ」
重たい沈黙が流れる中、ようやく口を開いてくれた親父から冷たくそう告げられた言葉に、俺は黙って首を縦に振る。
母親が死んで、苗字が変わることは初めから分かっていたので、別に驚きはしなかったけど、その途端向かいに座っていた女が突然すすり泣きだした為、その変貌に俺は滅茶苦茶驚いた。
「私の家族であり、今日からお前の母親になる東郷洋子と、その隣はお前の兄にあたる東郷竜司だ」
しかし、親父はそんな様子を気にすることはなく、目の前に座る二人を手で案内しながら、さらりと言い放った言葉に俺は耳を疑った。
……家族ってなに?
母親がいて、俺がいて、父親がいる。
俺の知る家族はその三人だけなのに、この人達が親父の家族だというのなら、自分と母親は一体何なのか。
子供の俺は言われた事がよく理解出来ず、その場で激しく戸惑っていると、それを見兼ねた親父は深く溜息を吐いた。
「お前の母親は昔私が酒に酔って一度相手をした女だ。だから、私の本当の家族はこの人達なんだよ。……まあ、お前にこんな話をしても分からないだろうけど。とりあえず、私はまだ仕事が残っているから戻るぞ」
そう諦めたように二度目の溜息を吐くと、決まりが悪くなってきたのか、親父はそのまま席を立つと俺達を残して足早にこの部屋を出て行ってしまった。
それから残される義理母と兄貴と俺。
俺は暫く親父に言われたことが頭の中をずっとぐるぐると駆け巡っていて、全部は理解出来なかったけど、幼心に大きなショックを受けたことはよく覚えている。
とりあえず、はっきりと分かったのは、俺はこの中で自分が思い描いてる家族にはなれないという事。
そして、自分は蚊帳の外の存在である事が自ずと感じ取れた。
それを表すように、親父がいなくなった途端、義理母と兄貴は俺には見向きもせず、二人ともリビングからさっさと出ていってしまい、最後に残されたのは俺と家政婦の人だけだった。
結局俺はあの二人の声が何も聞けないまま、挨拶もろくに出来ずに東郷家の人間となった。
そこから始まる生活は、今までとは180度変わるもので、俺の人格さえも段々と変わり始めていく。
この人達が一体誰なのか、状況が分からないまま呆然と立ち尽くしていると、席に座るよう促され、俺は恐る恐る親父の隣に座る。
その瞬間、女と子供の視線が槍のように突き刺さり、そこには憎悪が感じ取られ、一瞬にして戸惑いと恐怖が襲い掛かった。
そうして訳が分からないまま暫く沈黙が続き、その空気は張り詰めていて、子供ながらに逃げたい程息苦しく、この人達が俺を歓迎しているとは到底思えなかった。
「……東郷楓。それがお前の名前で、今日から東郷家の人間になる。だから、これからはこちらの教育方針に従ってもらうぞ」
重たい沈黙が流れる中、ようやく口を開いてくれた親父から冷たくそう告げられた言葉に、俺は黙って首を縦に振る。
母親が死んで、苗字が変わることは初めから分かっていたので、別に驚きはしなかったけど、その途端向かいに座っていた女が突然すすり泣きだした為、その変貌に俺は滅茶苦茶驚いた。
「私の家族であり、今日からお前の母親になる東郷洋子と、その隣はお前の兄にあたる東郷竜司だ」
しかし、親父はそんな様子を気にすることはなく、目の前に座る二人を手で案内しながら、さらりと言い放った言葉に俺は耳を疑った。
……家族ってなに?
母親がいて、俺がいて、父親がいる。
俺の知る家族はその三人だけなのに、この人達が親父の家族だというのなら、自分と母親は一体何なのか。
子供の俺は言われた事がよく理解出来ず、その場で激しく戸惑っていると、それを見兼ねた親父は深く溜息を吐いた。
「お前の母親は昔私が酒に酔って一度相手をした女だ。だから、私の本当の家族はこの人達なんだよ。……まあ、お前にこんな話をしても分からないだろうけど。とりあえず、私はまだ仕事が残っているから戻るぞ」
そう諦めたように二度目の溜息を吐くと、決まりが悪くなってきたのか、親父はそのまま席を立つと俺達を残して足早にこの部屋を出て行ってしまった。
それから残される義理母と兄貴と俺。
俺は暫く親父に言われたことが頭の中をずっとぐるぐると駆け巡っていて、全部は理解出来なかったけど、幼心に大きなショックを受けたことはよく覚えている。
とりあえず、はっきりと分かったのは、俺はこの中で自分が思い描いてる家族にはなれないという事。
そして、自分は蚊帳の外の存在である事が自ずと感じ取れた。
それを表すように、親父がいなくなった途端、義理母と兄貴は俺には見向きもせず、二人ともリビングからさっさと出ていってしまい、最後に残されたのは俺と家政婦の人だけだった。
結局俺はあの二人の声が何も聞けないまま、挨拶もろくに出来ずに東郷家の人間となった。
そこから始まる生活は、今までとは180度変わるもので、俺の人格さえも段々と変わり始めていく。