3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
触れてしまった禁断の果実。
あれだけ逃げ続けていたというのに。
もう、手遅れだ。
これまで培ってきたものが、どんどんと音を立てて壊れ始めていく。
それと引き換えに、長年の悔しさや、憎しみや、絶望が洗い流されていくようで、こんなに安らかな気持ちになれたのは一体いつぶりだろうか。
だから、もう手放したくない。
また掴むことが出来た、この温かさと、優しさと、人の愛を。
それから、俺は長年溜めていた涙を全部そこで出しきる程に、暫く泣きじゃくる子供のように美守を抱きしめ続けた。
その間、美守は何も言わず、黙ったまま俺の頭を優しく撫でてくれる。
それが更に追い討ちをかけるように、抱えていた意志としがらみがボロボロと崩れ落ちて、残るのは愛しい気持ちだけだった。
そんな自分に満足し始め、段々と心が軽くなるような感覚に浸っていると、いつの間にか俺はそこで意識が途絶えていたのだった。