3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
一人暮らしの男性の家にお邪魔するという初めてのことに、想像するだけで今から緊張してしまい、私は段々と口数が減っていってしまう。
けど、こうして普段から楓様の私生活には踏み込んでいるので、ただ場所が宿泊部屋からご自宅に変わっただけだと思えばいいのだけど……。
あまり深く考えると益々意識をしてしまうので、私はこれ以上気にするのはやめようとしたところ、ふとある考えが浮かんだ。
「楓様、もしキッチンを使わせて頂けるなら、その時に手料理を振舞ってもよろしいですか?」
先程料理のことを気にされていたし、これは良い機会だと思い、私は期待の眼差しで楓様の横顔を覗く。
「勿論。それじゃあ、家行く前に買い物するか」
すると、楓様は目を輝かせながら満面の笑みでそう応えると、いつにも増して嬉しそうな表情に、私は暫く目を奪われてしまった。
まさか、こんなに喜んで下さるなんて。軽い気持ちで提案してみたけど、予想以上の反応にこっちまで嬉しくなる。
しかも、食材の調達まで一緒に出来るとは。
これまた思ってもいない話に、想像しただけでも気持ちが舞い上がってきて、気付けば緊張感は自然と薄れていった。
それから、たわいもない会話をしながらマッサージを終えると、それなりにいい時間になっていたので、何もなければ今日の仕事もここまでかと思うと寂しさが押し寄せてくる。
先程楓様が仰ったように今日が最後の宿泊日であり、今回は色々あって、あまりホテルにいらっしゃらなかったので、その場を離れたくない気持ちになかなか足が進まない。
今度の休みの日に会う約束が出来ただけでも喜ばしいはずなのに、それだけじゃ物足りなくなってきている。
もっと、楓様と一緒にいたい。
毎日顔を合わせたい。
これまでは次の滞在まで待つぐらいの余裕はあったのに、想いが通じてからそれに耐える自信がない。
もう、楓様のバトラーというだけでは満足出来ない自分がいる。
「それでは、私はこれで失礼します。また何かあったらいつでもお呼び下さい」
一先ず、この欲求不満な気持ちを何とか抑え、私は業務用の挨拶と共に、一礼をしてから部屋を出ようと踵を返した時だった。
「美守」
突然名前を呼ばれて振り向くと、楓様はソファーから立ち上がり、無言でこちらに近付いてくる。
何事だろうと思っていると、息遣いを感じるぐらいに楓様の顔が接近してきた途端、右頬に柔らかく少し湿った感触を感じ、私は驚きのあまり目を見開きその場で固まる。
そんな私を満足気な顔で覗き込むと、今度は左頬に優しくそっと手を添えられ、琥珀色の綺麗な瞳が揺れる私の目を捉えた。
「好きだよ」
そして、まさかここでその言葉を聞けるとは思わず、キスをされたのと相まって、私は溶けるのではないかと思う程に全身が熱くなってくる。
「おやすみ」
それから、一向に無反応な私には構わず、楓様はやんわり微笑んでそう告げると、私から手を離しソファーへと戻られていった。
「お、おやすみなさい」
ようやく思考回路が働き出し、私は何とか声を絞り出すと、頭がぼんやりとしたまま再び一礼をして部屋を後にしたのだった。
けど、こうして普段から楓様の私生活には踏み込んでいるので、ただ場所が宿泊部屋からご自宅に変わっただけだと思えばいいのだけど……。
あまり深く考えると益々意識をしてしまうので、私はこれ以上気にするのはやめようとしたところ、ふとある考えが浮かんだ。
「楓様、もしキッチンを使わせて頂けるなら、その時に手料理を振舞ってもよろしいですか?」
先程料理のことを気にされていたし、これは良い機会だと思い、私は期待の眼差しで楓様の横顔を覗く。
「勿論。それじゃあ、家行く前に買い物するか」
すると、楓様は目を輝かせながら満面の笑みでそう応えると、いつにも増して嬉しそうな表情に、私は暫く目を奪われてしまった。
まさか、こんなに喜んで下さるなんて。軽い気持ちで提案してみたけど、予想以上の反応にこっちまで嬉しくなる。
しかも、食材の調達まで一緒に出来るとは。
これまた思ってもいない話に、想像しただけでも気持ちが舞い上がってきて、気付けば緊張感は自然と薄れていった。
それから、たわいもない会話をしながらマッサージを終えると、それなりにいい時間になっていたので、何もなければ今日の仕事もここまでかと思うと寂しさが押し寄せてくる。
先程楓様が仰ったように今日が最後の宿泊日であり、今回は色々あって、あまりホテルにいらっしゃらなかったので、その場を離れたくない気持ちになかなか足が進まない。
今度の休みの日に会う約束が出来ただけでも喜ばしいはずなのに、それだけじゃ物足りなくなってきている。
もっと、楓様と一緒にいたい。
毎日顔を合わせたい。
これまでは次の滞在まで待つぐらいの余裕はあったのに、想いが通じてからそれに耐える自信がない。
もう、楓様のバトラーというだけでは満足出来ない自分がいる。
「それでは、私はこれで失礼します。また何かあったらいつでもお呼び下さい」
一先ず、この欲求不満な気持ちを何とか抑え、私は業務用の挨拶と共に、一礼をしてから部屋を出ようと踵を返した時だった。
「美守」
突然名前を呼ばれて振り向くと、楓様はソファーから立ち上がり、無言でこちらに近付いてくる。
何事だろうと思っていると、息遣いを感じるぐらいに楓様の顔が接近してきた途端、右頬に柔らかく少し湿った感触を感じ、私は驚きのあまり目を見開きその場で固まる。
そんな私を満足気な顔で覗き込むと、今度は左頬に優しくそっと手を添えられ、琥珀色の綺麗な瞳が揺れる私の目を捉えた。
「好きだよ」
そして、まさかここでその言葉を聞けるとは思わず、キスをされたのと相まって、私は溶けるのではないかと思う程に全身が熱くなってくる。
「おやすみ」
それから、一向に無反応な私には構わず、楓様はやんわり微笑んでそう告げると、私から手を離しソファーへと戻られていった。
「お、おやすみなさい」
ようやく思考回路が働き出し、私は何とか声を絞り出すと、頭がぼんやりとしたまま再び一礼をして部屋を後にしたのだった。