3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
そのままフラフラと足が覚束ないまま部屋を出て、3121号室の扉を閉める。

その瞬間一気に力が抜けて、私はその場でしゃがみ込んでしまった。

今になってようやく状況を飲み込み始め、同時に激しく鳴り響いてくる心音。

頬ではあるけど人生初のキスと、ついに楓様から好きだと仰って頂けた事に、喜びで体が震えてくる。

私の想いが通じた後、楓様からの言葉はなくても気持ちはひしひしと伝わってくるから、それで良いと思っていた。
けど、やはり何処か不安は拭いきれなくて。

でも、こうしてはっきりと口にして下さり、ようやくここで本当にお互いの想いが通じ合ったと確信が出来る。

先程まではまた暫く会えなくなる寂しさで心が空っぽになっていたけど、今はそこに幸福感が注ぎ込まれ、満たされた気持ちになっていく。

相手の気持ちがはっきりと分かると、こうも安心するものなんだと。

その暖かさに気が緩み始め、私はまたもや涙が出そうになるのを何とか必死で堪える。

そして、後になって襲いかかってくる後悔。
好きだと仰って下さった時、私も自分の気持ちをもう一度楓様にしっかりとお伝えすれば良かったと。

何回言っても言い足りないくらい、こんなに愛しい気持ちで溢れているのに、何も言えなかったことがとても不甲斐ない。

けど、これで私も遠慮なく言葉にすることが出来るので、恥ずかしさはなかなか消えないけど、これからは沢山この想いを口でも伝えていこうと固く誓い、私は拳を握りしめた。
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