3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜

第2話.破天荒な御曹司



——VIP階層勤務から早三日目が経過。


あの日以来東郷様のご宿泊はなく、平穏が続いた。

お陰で初日に見た生々しい営みの光景がようやく脳裏から薄れていき、ここの環境にも徐々に慣れ始めた私は今日も充実した日々を過ごす。

どうやら東郷様の宿泊頻度は御子柴マネージャーや瀬名さん曰く、特に決まりはないらしい。

職場が直ぐ隣にあるオフィスビルで、業務が佳境に入ると、ここを連続的にご利用する事が多いのだとか。

そして、その手続きは全て秘書の方が行っている為、本人がフロントに現れることはまずない。

女性の連れ込みもあったりなかったりで、運が悪ければ私のような目に遭うとのこと。


大手不動産会社の東郷グループ。
住宅やオフィスビルを中心に、ホテルや大型商業施設、金融など幅広い事業を展開する大財閥で、ご子息様達と共に運営をしているそうな。

そのうちの一人、二人兄弟の末っ子である東郷(とうごう)(かえで)様。

私と二つ上しか違わないのに、その経営力と発想力は並外れていて、かなりやり手な方だと入社当時はそんな噂が流れていた。

それに加えてかなりの容姿端麗であり、お目にかかった事がある同僚女性職員の方々が、とても興奮していた程美形な方なんだとか。

そんな話を耳にした時は、一体どれ程のお方なのだろうと思っていたけど……。

まさか、あんな人間的に欠落していらっしゃるお方だったとは。

しかも、容姿なんてあの状況で見れる筈もなく、未だにどんな方なのか分からない。

……まあ、見たいとも思わないのですが……。
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