3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
今度は初めて口にキスをされ、昨夜の頬キス以上の恥ずかしさに思考は停止し、今体温を測れば高熱を叩き出すのではないかというくらいに、狂おしい程の熱が全身を襲う。
「……これくらいなら一応耐えられるんだな」
すると、硬直する私には構わず楓様は不敵な笑みを浮かべると、悪戯っぽい目で眺めながらポツリと呟いた一言に、私はようやく思考回路が動き始めた。
「もう、これ以上私で遊ばないで下さい」
キスをされた事はこの上なく嬉しくて幸せだったけど、こうして男性に免疫がない私の反応を楽しむ姿はどうにも腑に落ちず、不貞腐れ気味に頬を膨らませて彼を軽く睨みつける。
「別に遊んでる訳じゃない。確かめてるんだよ、美守にどこまでしていいのか……」
しかし、そんな私の視線をものともしない楓様はそっと右頬に手を添えてくると、耳元で吐息混じりの甘い声でそう囁かれてしまい、私はその言葉だけで卒倒しそうになるのを何とか堪える。
「悪いけど、俺はそこまで忍耐強くないんだ。けど、大事にしたいからゆっくり段階を踏んでいかないとな」
そして、またもや耳を疑うような大胆発言と、次は額に軽く口付けをされてしまい、私は足の力が徐々に抜け落ちていく。
段階という事は、ゆくゆくは私も楓様に……。
そう思った途端、初めて出会った時に目撃してしまったあの生々しい光景が脳裏に浮かび上がった瞬間、私はついに自分の体が支えられなくなってしまい、後ろへ倒れそうになるも、楓様が腕に力を込めてくださったお陰で何とかそれは免れた。
「その様子だと、暫く先は長そうだな」
それから深い溜息と共に呆れた眼差しを向けられてしまい、バツが悪くなった私はつい視線を逸らしてしまった。
確かに、経験豊富そうな楓様から見れば、私なんてただの子供なのでしょう。
それが何だか悲しくて、自分ではそんな楓様を満足させる事が出来なくて。
不甲斐ない気持ちに押し潰されそうになっていくところ、不意に楓様は包み込むように私を優しく抱き締めてきた。
「でも、それでいいんだ。俺は美守が側にいるだけで十分だから……」
その上、まるでご自分にもいい聞かせるように、一言一言噛み締めながらゆっくりと仰って頂いた言葉が負の感情を一気に吹き飛ばしてくれて、安心感を覚えた私は同じく楓様の体をしっかりと抱きしめ返した。
私だって、いつまでもずっと末長く楓様の側に居たい。
そんな気持ちがまたもや肥大化し始めていくのに、やはり口には出せなくて。
始めの頃よりもその状況に耐える事が辛くなってきた私は、小さく体が震えてくる。
「…………それじゃあ、行ってくる」
すると、暫く長い沈黙が流れる中、突如呟いた楓様の低い声に何だか重みを感じ、引っ掛かりを覚えた私は咄嗟に顔を上げると、一瞬憂いを帯びた表情を捉えるも、直ぐに穏やかな面持ちへと変わり、私からそっと離れた。
「楓様……」
それが何だか余計に気掛かりで、そのまま離れていく楓様を引き止めるように、私は手を伸ばして服の裾を軽く引っ張ってしまう。
「どうした?」
私の咄嗟の行動に、少し驚きの表情を見せて尋ねてくる楓様に何て返答すればいいのか分からず、私はその場で黙ってしまう。
「……あ、いえ。その……いってらっしゃいませ」
結局最後まで言葉が見つからなまま、慌てて手を離すと、私は笑顔を取り繕って軽く頭を下げる。
「じゃあ、また今度休みの日にな」
楓様はそれ以上追求する事なく、一言そう仰ると、再びキャリケースを手に持ち3121号室の扉を開けて、部屋を出て行ってしまった。
「……これくらいなら一応耐えられるんだな」
すると、硬直する私には構わず楓様は不敵な笑みを浮かべると、悪戯っぽい目で眺めながらポツリと呟いた一言に、私はようやく思考回路が動き始めた。
「もう、これ以上私で遊ばないで下さい」
キスをされた事はこの上なく嬉しくて幸せだったけど、こうして男性に免疫がない私の反応を楽しむ姿はどうにも腑に落ちず、不貞腐れ気味に頬を膨らませて彼を軽く睨みつける。
「別に遊んでる訳じゃない。確かめてるんだよ、美守にどこまでしていいのか……」
しかし、そんな私の視線をものともしない楓様はそっと右頬に手を添えてくると、耳元で吐息混じりの甘い声でそう囁かれてしまい、私はその言葉だけで卒倒しそうになるのを何とか堪える。
「悪いけど、俺はそこまで忍耐強くないんだ。けど、大事にしたいからゆっくり段階を踏んでいかないとな」
そして、またもや耳を疑うような大胆発言と、次は額に軽く口付けをされてしまい、私は足の力が徐々に抜け落ちていく。
段階という事は、ゆくゆくは私も楓様に……。
そう思った途端、初めて出会った時に目撃してしまったあの生々しい光景が脳裏に浮かび上がった瞬間、私はついに自分の体が支えられなくなってしまい、後ろへ倒れそうになるも、楓様が腕に力を込めてくださったお陰で何とかそれは免れた。
「その様子だと、暫く先は長そうだな」
それから深い溜息と共に呆れた眼差しを向けられてしまい、バツが悪くなった私はつい視線を逸らしてしまった。
確かに、経験豊富そうな楓様から見れば、私なんてただの子供なのでしょう。
それが何だか悲しくて、自分ではそんな楓様を満足させる事が出来なくて。
不甲斐ない気持ちに押し潰されそうになっていくところ、不意に楓様は包み込むように私を優しく抱き締めてきた。
「でも、それでいいんだ。俺は美守が側にいるだけで十分だから……」
その上、まるでご自分にもいい聞かせるように、一言一言噛み締めながらゆっくりと仰って頂いた言葉が負の感情を一気に吹き飛ばしてくれて、安心感を覚えた私は同じく楓様の体をしっかりと抱きしめ返した。
私だって、いつまでもずっと末長く楓様の側に居たい。
そんな気持ちがまたもや肥大化し始めていくのに、やはり口には出せなくて。
始めの頃よりもその状況に耐える事が辛くなってきた私は、小さく体が震えてくる。
「…………それじゃあ、行ってくる」
すると、暫く長い沈黙が流れる中、突如呟いた楓様の低い声に何だか重みを感じ、引っ掛かりを覚えた私は咄嗟に顔を上げると、一瞬憂いを帯びた表情を捉えるも、直ぐに穏やかな面持ちへと変わり、私からそっと離れた。
「楓様……」
それが何だか余計に気掛かりで、そのまま離れていく楓様を引き止めるように、私は手を伸ばして服の裾を軽く引っ張ってしまう。
「どうした?」
私の咄嗟の行動に、少し驚きの表情を見せて尋ねてくる楓様に何て返答すればいいのか分からず、私はその場で黙ってしまう。
「……あ、いえ。その……いってらっしゃいませ」
結局最後まで言葉が見つからなまま、慌てて手を離すと、私は笑顔を取り繕って軽く頭を下げる。
「じゃあ、また今度休みの日にな」
楓様はそれ以上追求する事なく、一言そう仰ると、再びキャリケースを手に持ち3121号室の扉を開けて、部屋を出て行ってしまった。