3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
部屋に残された私は、扉が閉まった後も暫くその場で立ち尽くし、誰も居ない玄関を見据える。

楓様が出て行かれてから急激に襲ってくる寂しさ。

また直ぐ会えるはずのなのに、どうしようもなく不安に駆られてしまうこの気持ちは、絶対に会えるという保証がないからでしょうか……。

この一日の間で本音で語って下さり、熱くて蕩けるような甘いキスまでして頂いた。

楓様に愛されていく度に、気丈に振る舞っていた筈の心にどんどんと綻びが出来始めて、どうにかなってしまいそうになる。

凄く会いたいのに、会う度に離れたくない気持ちが強くなってきて、いざ引き離されてしまったら、狂い落ちてしまいそうで怖くなる。

……けど、もしかしたら楓様はそんな私の状況をご存知なのかもしれない。

朝食の時に仰った全てを片付けてからという言葉と、あの時一瞬だけ見せた憂いげな表情。

一体楓様が何をされようとしているのかは分からないけど、もし泉様の婚約を破棄しようとしているのなら、それがどういう事になるのか、きっと彼が一番よく分かっているのでしょう。

愛しているから全てを支えたいのに、自分の限界を知り、これ以上何も出来ないことに胸が苦しくなってくる。

でも、ここでそう思ってもキリがないので、私は深く溜息を吐くと、食器を片付けるためにリビングへと引き返した。

とりあえず、今私に出来るのは、今度会う日までに楓様に喜んで頂く為に料理を頑張ること。

不確定な未来に不安を抱き続けるよりは、目前の幸せを大事にしようと。

私は改めて気持ちを切り替えると、一人黙々と食器を片付け始めたのだった。
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