3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「もしかして、そっちでもその話が広まっているの?」
その時には既に遅く、声色が一変し、すかさず核心をつく質問をされてしまった為、私は何と返答すればいいのか言葉に詰まってしまう。
「え、えと……そうみたいですね。でも、異動理由は伝えられているでしょうし、当然と言えば当然の話ですよ。とりあえず、今は熱りが冷めるのをひたすら待つしかないですかね」
けど、ここはもう認めるしかないので、私は苦笑いを浮かべながら、あまり多くを語らず現状をそのまま伝えた。
「東郷様には話したの?」
すると、尚も心配そうな声で尋ねてくる瀬名さんの言葉に、私はまたもや痛いところを突かれてしまい口を閉ざしてしまう。
「…………その反応だとまだ話してないんだね」
それが肯定だと捉えられ、電話越しから聞こえてきた瀬名さんのため息で、顔を見なくても彼がどんな表情をしているのか何となく想像がつく。
「今はお仕事で忙しいですから。それに海外出張から戻ったら連絡するって仰っていましたし、その時にお話しすればいいかなって」
どのみち、いつかは楓さんの耳に入ることなので、今はとにかく仕事に集中して欲しいという気持ちを瀬名さんに話すと、何やら急に黙り込んでしまい、私は訳が分からず狼狽えてしまった。
「それ、もし俺が東郷様の立場だったら滅茶苦茶ショックだな。そんな大事な話はもっと早く教えて欲しいし、頼られていない気がして悲しくなる」
それから暫くして、滅多に聞くことのない瀬名さんの不機嫌そうな声に、私は一瞬肝を抜かされた。
「え、えと……そ、そういうものなのですか……?」
まさか瀬名さんがここまで怒るなんて思ってもいなかったので、そんなに不味いことだったのか不安になり、私は恐る恐る聞いてみる。
「当たり前でしょ。仕事も大事だけど、それ以上に大切な存在なのに、それを分かってもらえないのは辛いよ」
そうはっきりと断言する瀬名さんの言葉に、私はある記憶がふと蘇った。
確かに、以前楓さんが竜司様に過去のことを私の前で触れられた時、とても躊躇っていらっしゃった。
私が楓さんに対する愛情はそれくらいで揺らぐようなものではないのに、それがちゃんと伝わっていない気がして悲しかった。
もしかしたら、状況は違えど、私のこの行いも彼と同じような事をしてしまっているのでしょうか……。
「……分かりました。それでは明日にでも楓さんにこちらからご連絡したいと思います」
そう思うと、段々と罪悪感が押し寄せてきて、私は瀬名さんの忠告を素直に受け止めることにした。
「うん、その方がいいよ。東郷様もきっと天野さんの声を聞けば喜ぶと思うから」
こうして、ようやく瀬名さんの声色に穏やかさが戻り、私も楓さんにこの事を伝えると思うと何だか少しだけ肩の荷が降りてくる気がした。
やっぱり、流石です。
私が気付かない事を瀬名さんはいつも教えてくれて……。
これでは、まだまだこの先彼に頼らざるを得ないことが多そうですね。
そんな相変わらずの恋愛経験値が乏しい自分を嘆きつつも、改めて瀬名さんの存在に有り難みを感じながら、心地良い風が吹く中、私は暫しの間彼との会話を満喫したのだった。
その時には既に遅く、声色が一変し、すかさず核心をつく質問をされてしまった為、私は何と返答すればいいのか言葉に詰まってしまう。
「え、えと……そうみたいですね。でも、異動理由は伝えられているでしょうし、当然と言えば当然の話ですよ。とりあえず、今は熱りが冷めるのをひたすら待つしかないですかね」
けど、ここはもう認めるしかないので、私は苦笑いを浮かべながら、あまり多くを語らず現状をそのまま伝えた。
「東郷様には話したの?」
すると、尚も心配そうな声で尋ねてくる瀬名さんの言葉に、私はまたもや痛いところを突かれてしまい口を閉ざしてしまう。
「…………その反応だとまだ話してないんだね」
それが肯定だと捉えられ、電話越しから聞こえてきた瀬名さんのため息で、顔を見なくても彼がどんな表情をしているのか何となく想像がつく。
「今はお仕事で忙しいですから。それに海外出張から戻ったら連絡するって仰っていましたし、その時にお話しすればいいかなって」
どのみち、いつかは楓さんの耳に入ることなので、今はとにかく仕事に集中して欲しいという気持ちを瀬名さんに話すと、何やら急に黙り込んでしまい、私は訳が分からず狼狽えてしまった。
「それ、もし俺が東郷様の立場だったら滅茶苦茶ショックだな。そんな大事な話はもっと早く教えて欲しいし、頼られていない気がして悲しくなる」
それから暫くして、滅多に聞くことのない瀬名さんの不機嫌そうな声に、私は一瞬肝を抜かされた。
「え、えと……そ、そういうものなのですか……?」
まさか瀬名さんがここまで怒るなんて思ってもいなかったので、そんなに不味いことだったのか不安になり、私は恐る恐る聞いてみる。
「当たり前でしょ。仕事も大事だけど、それ以上に大切な存在なのに、それを分かってもらえないのは辛いよ」
そうはっきりと断言する瀬名さんの言葉に、私はある記憶がふと蘇った。
確かに、以前楓さんが竜司様に過去のことを私の前で触れられた時、とても躊躇っていらっしゃった。
私が楓さんに対する愛情はそれくらいで揺らぐようなものではないのに、それがちゃんと伝わっていない気がして悲しかった。
もしかしたら、状況は違えど、私のこの行いも彼と同じような事をしてしまっているのでしょうか……。
「……分かりました。それでは明日にでも楓さんにこちらからご連絡したいと思います」
そう思うと、段々と罪悪感が押し寄せてきて、私は瀬名さんの忠告を素直に受け止めることにした。
「うん、その方がいいよ。東郷様もきっと天野さんの声を聞けば喜ぶと思うから」
こうして、ようやく瀬名さんの声色に穏やかさが戻り、私も楓さんにこの事を伝えると思うと何だか少しだけ肩の荷が降りてくる気がした。
やっぱり、流石です。
私が気付かない事を瀬名さんはいつも教えてくれて……。
これでは、まだまだこの先彼に頼らざるを得ないことが多そうですね。
そんな相変わらずの恋愛経験値が乏しい自分を嘆きつつも、改めて瀬名さんの存在に有り難みを感じながら、心地良い風が吹く中、私は暫しの間彼との会話を満喫したのだった。