3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「……美守の顔が見たい。ビデオ通話出来るか?」
すると、突然要求された内容に戸惑ってしまったけど、私も彼の顔を見たい欲求が抑えられず、二つ返事をしてから、恐る恐るボタンを押してみる。
その瞬間、画面が切り替わり、そこにはベットの上で寝転びながら、満足げな表情でこちらを見つめてくるバスローブ姿の楓さんが映り込んできた。
まさかの予想に反した体勢であることと、本当にシャワーから出たばかりなのか。髪がまだ乾ききってなく、しかも寝転んでいるせいで若干バスローブがはだけ、楓さんの胸元が顕になっている。
画面越しからも十分伝わってくる彼の溢れんばかりの色気に、私は全身が熱くなって直視することが出来ず、つい顔を背けてしまった。
「なんだよ。照れてんの?」
「わ、分かってるなら聞かないで下さい!」
そんな私の反応を楽しむかのように、悪戯な笑みを浮かべながら白々しく聞いてくる意地の悪さが悔しくて。私は頬を膨らませながら彼を軽く睨みつける。
「これぐらいでその反応だと先が思いやられるな。いざ抱く時になったらこんなんじゃ済まされないぞ?」
しかも、呆れながらも煽るような目付きをしながら、更に艶っぽい声で刺激的な発言をされてしまい、もはや頭がパニック状態になってしまう。
「それはそうと、お前は何処に居るんだよ?なんで茂みの中にいるんだ?」
けど、焦る私には構うことなく、急に話を切り替えてきた上に、怪訝な顔付きで何とも痛い所をついてくる疑問を投げられてしまい、私は一瞬言葉に詰まる。
「えと、軽井沢のリゾートホテルに配属されたんです。今お昼休憩中なんですが、とりあえず人目のつかない場所で話そうかと……」
コソコソしている所を見られたくはなかったけど、やむを得ない状況に私は苦笑いを浮かべた。
「……そっか。軽井沢か。思っていたより近くて良かった」
そこから何かを汲み取ったのか。少し影掛かった笑みを見せて呟いた楓さんの意味深な一言から、彼の言わんとする想いがよく伝わってきて、私は口元を緩ませて静かに頷く。
「楓さん、今度のドライブデートの行き先はここにしませんか?空気も美味しくて景色も綺麗で凄く素敵な所ですよ」
それから、彼に少しでも安心してもらいたくて、満面の笑みで軽井沢の良さをアピールしてみる。
「それじゃあ、次は泊まりだな。日帰りじゃ勿体ないだろ」
すると、まさかの展開に私の頭の中はまたもや混乱し始めていく。
……か、楓さんとお泊まりだなんてっ!
つまりは翌日まで一緒にいるということであって、そうなると寝室も一緒ということになるのでしょうか!?
「……あー。今美守が考えている事が手に取るように分かるわー」
そんな一人焦っている様子を楓さんは薄ら笑いを浮かべながら楽しげに眺めている状況に、余計恥ずかしさが込み上がってくるのと、相変わらずの余裕な態度が何だか悔しくて、私は頬に熱を感じながらジト目で再び彼を軽く睨み付けてしまう。