3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
以前と同じようにラウンジへと向かい、用意された軽食とシャンパンをワゴンに乗せて例の部屋まで向かう。
そして、抑えようとしてもやはり近付く度に早くなっていく鼓動。
私は何とか平常心を保つ為に何度か深呼吸をする。
とりあえず、確率は五分五分だと言っていましたし、それに御子息様に対して応対が遅れてしまったなんて、状況はどうあれあってはならない事。
瀬名さんは大丈夫と仰っていましたが、どんな事態だったとしても、ここはしっかりと謝罪を申し上げなくては。
そう固く心に誓い、到着した3121号室と刻印された扉の前で、私は対峙した。
前回同様、ベルを一度鳴らしてもやはり応答はないので、首に下げてあるマスターカードキーを手に取り、鍵を開けて部屋の中へと入る。
「失礼いたします!先程は対応に遅れてしまい大変申し訳……」
「あん!ああっ!楓さん、そこ!激しいですっ!」
それから意を決して奥へと入った瞬間、その言葉が掻き消される程、部屋中に響き渡る女性の大きな喘ぎ声。
同時に目に飛び込んで来た想像を絶するとんでもない光景に、私は危うく卒倒しそうになった。
「もっと、もっとして下さいっ!」
そこには前回とはまた違う、ソファーの上で全裸になった女性の下半身とバスローブ姿の男性の下半身が激しくぶつかり合っている姿に、思考回路はもはや機能を失い、全身の毛が一気に逆立ってくる。
布が擦れる音と、叫びにも近い煽るような女性の情欲的な声が私の耳に容赦なく襲いかかる。
……。
………い。
……………い。
いやあああああああああああっ!!!
そして、ようやく思考回路が動き始めた頃、私は声鳴き声で今までにない程の大絶叫を挙げてしまったのだった。