3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
こうして次の部屋へ向かうために、顧客情報に目を通すと今度は海外から来る初回のお客様で、しかも、本日が誕生日だった。

都内のホテルだと在日ビジネスマンも多いけど、ここは軽井沢なので来るお客様は殆どが観光客。

なので、このお客様がどのような宿泊目的なのかは分からないけど、もし誕生日に日本旅行を選んで下さったのだとしたら、これはより一層素敵な演出をしなくてはと。
私は気合を入れて、ちょっとしたサプライズをすることにした。

当ホテルではお客様に対してサービスとして自由に使えるお金が幾らか認められていて、私はその制度を使って、休憩時間に人気商品である詰め合わせクッキーを売店で購入し、個人で常備しているメッセージカードを用意した。

カードにはその国の言語でお祝いの言葉と、ちょっとしたメッセージを添えて、テーブルの上にそっと置く。

喜んで頂けるか分からないけど、これが少しでも日本旅行のちょっとした良い思い出になってくれればと。
そう願いを込めて私はその部屋を後にした。


ハウスキーピング担当になってから、ルームサービスやバトラーとは違ったおもてなしが出来ることを思い出し、改めてこの仕事の楽しさを感じる。

おもてなしとお節介は紙一重なので、今でも見極め方は難しいけど、スマートなホスピタリティを提供出来るホテルマンを目指して、私は日々邁進していこうと思った。
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