3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「せせせせせせ瀬名さんっ!おおおお男の人のあれが女の人のあれに入っていて、あああああれがあれしてああなって……っ!」
何とか死に物狂いで部屋を抜け出してきた私は、フロントにいる瀬名さんの姿を見るや否や、頭が大混乱の中、周囲の目も忘れて声を震わせながら縋り付くように彼の元へと掛け寄る。
「あー……。天野さん、またどえらい現場に出くわしちゃったね」
そんな私を、瀬名さんはすごく遠い目をしながら、憐れむ表情で静かに私を宥めてくる。
「瀬名さん、ダメですっ!やっぱり私耐えられません!!」
先程見せた強い意志と使命感は何処へ行ったのやら。
そんな事はもうどうでもいいと思える程に、今の私の脳内はこの場から逃げ出したいという想いで溢れかえり、恥も捨てて瀬名さんに弱音を連発する。
「というか、人が来るって分かっているのに、何故毎回あのタイミングでオーダーするのでしょうかっ!?しかも、ソファーの上であんな行為をっ!寝室であればまだ目に付かなくていいもののっ!」
そして我を忘れて、身体を震わせながら頭を抱え込む。
二分の一の確率と言われていたのに、またもや男女の営みに遭遇してしまい、あまつさえ前回以上の生々しい光景を目の当たりにしてしまうなんて……。
私は……私は一体どんな悪行をしてしまったのでしょうか!?
「天野さん落ち着いて。とりあえず今日はもう勤務終了だから早く切り上げて帰った方がいいよ」
一向に鎮まらない私を介抱するように、背中を優しくさすってくれる瀬名さん。
そのお陰で体の震えは徐々に治り、冷静さを取り戻していくと共に、私はようやくしでかしてしまった自分のはしたない行為を自覚し始める。
「……あ。も、申し訳ございません。見苦しいところをお見せしてしまって」
よりにもよって瀬名さんの前で取り乱してしまうなんて。
自己嫌悪に陥った私は、今度は違う意味で頭を抱えたくなってくる。
「そんな事気にしないで。それよりも、俺は天野さんが心配だよ。本当なら一緒に帰りたいところだけど、残務があるし……フォロー出来なくてごめんね」
けど、それに全く動じず、とても気遣ってくれる瀬名さんの惜しみない優しさに、私はもう涙が溢れそうになってくる。
「……いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
本当なら是が非でも一緒に帰りたいところだけど、これ以上瀬名さんにご迷惑をお掛けする訳にもいかず、私は精一杯の笑顔を作って彼に一礼したのだった。