3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
———あれから二日後。
「っあ、美守先輩!」
休憩時間となり、お客様が集うロビーを歩いていると、背後から後輩の桜井さんに呼び止められ、私は徐に振り返る。
「ご無沙汰ですね!先輩がVIP階層に異動されてから全然会わなくなっちゃいましたよねー。お元気……というか、なんかやつれました?」
ほぼ一週間振りに会う後輩の桜井さん。
相変わらずの元気な明るい姿に癒されるも、あれから寝不足続きの私は心身共に疲れ果て、上手く笑い返す事が出来なかった。
「桜井さんはお変わりないようで何よりです。本当に階層が違うだけでこんなに会えないものなんですね」
一般階層とは違い、VIP階層の従業員は年齢層が割と高めで落ち着いた方達が多いので、桜井さんのような潑剌《はつらつ》とした方とお話しするのがとても久しぶりに感じる。
「やっぱりVIP階層って大変なんですか?私もセレブの方達とお話すると緊張しちゃうんですよねー。特に売上に凄い貢献している人だと下手な事言えないっていうか、一挙一動更に意識しないといけないって言うか……」
そして、彼女のいつもの絶え間ない話しぶりに、私は何だか安心感を覚えた。
「それよりも、美守先輩って瀬名先輩の所に居るんですよね!?いいなぁー、羨ましいー。てか、天野先輩と瀬名先輩って二人並ぶと絵になりますよね!何かハイスペック者同士超お似合いって感じです!」
「わ、私と瀬名さんが!?」
すると、まさかの瀬名さんの話題が出て、不意をつかれた私は思いっきり反応すると、一気に赤面し始め挙動不審になってしまう。
「あれ?もしかして美守先輩って瀬名先輩の事好きなんですか?」
しかも、こんな一瞬の反応にずばり胸中を見抜かれた私は、頭が真っ白になり、更に狼狽えてしまった。