3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
◇◇◇



__時刻はもうすぐ四時を回るところ。


閑散期であり平日なので、仕事はあっという間に終わり、私は早く身支度を済まそうと急いで更衣室へと向かう。

先程白鳥様から、もうすぐこちらに着くというメッセージが届いていたので、私もお待たせしてはいけないと。急いで私服へと着替えて部屋を出た時だった。

「あれ?お疲れ様です。今日はやけに急足ですね」

丁度更衣室へ入ろうとする宮田さんと鉢合わせしてしまい、驚きのあまり思わず肩が大きく震えてしまった。

「……あ、えと。これから都内の友人と会うので……」

よりにもよって、今一番会いたくない人と遭遇してしまい、私は冷や汗が止まらない。

ここで楓さんの秘書である白鳥様と私が繋がっている事が宮田さんにバレてしまったら、また変な勘繰りをされてしまうかもしれない。
しかも、白鳥様にまで迷惑が掛かるおそれがありそうで、ここは何としてでも宮田さんには彼女の事を知られて欲しくない。

「ロビーで待ち合わせているので私はこれで。それでは、お疲れ様でした」

だから、彼女に余計な詮索をされないよう、すぐさま話しを切り上げ、急いでその場から離れようと一歩足を踏み出した瞬間だった。

「えー、それなら私も付いて行っていいですか?是非挨拶してみたいです!」


…………はい?


まさかの引き下がる事なく、笑顔で同行したいという予想外の反応に、私は一瞬目が点になってしまう。

普通、何の接点もない他人の友人に会いたいと思うものなのか。仲間内の友人なら分からなくはないけど、宮田さんは年代も違うし、しかも、彼女は自分の事を良く思っていない。

……もしかしたら、また何か目的があるのでは……。

「ダメですか?」

不可解な彼女の行動に思考を巡らせていると、なかなか返答しない私に宮田さんはとても寂しそうな目を向けて良心に訴えかけてくる。

「……い、いえ。分かりました。では少しだけなら……」

なので、本当は会わせたくなかったけど、ここで変に突っぱねても逆効果な気がするので、私は諦めて彼女の要求を呑むことにしたのだった。


それから、何やら彼女はえらく上機嫌に後を付いて来て、その笑顔にやはり裏を感じてしまう私は、内心ずっと冷や冷やしながらロビーへと向かう。

その間よくよく考えてみれば、ここで白鳥様に紹介出来れば相談するにあたって話は早いと思う。けど、それよりも彼女がどんな行動に出るのか、そっちの方が気掛かりで、不安はどんどん募っていく。

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