3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
……楓さんが嫉妬。

確かに、とても愛されていることは良く伝わってくるけど、あの楓さんがそんな風になる姿がいまいち想像出来ず、顎に手を当てて宙を見つめる。

「でも、私は純粋にお二人のことを応援していますよ。えげつない人間ですが、それでも楓様は私にとって大切な存在なので、早く幸せになって欲しいと本気で願っています」

そうして暫く妄想の世界に入り込んでいると、改めて教えられた楓さんに対する白鳥様の想いに、私は心を打たれる。
それはとても綺麗で、温かくて、優しくて。
この言葉をもし楓さんが聞いたら、きっと内心喜ぶと思うのだけど、きっと白鳥様は本人の前では決して口にしないのでしょう。

もう少しお二人が素直になれば、もっと関係は良好になる気がするけど、きっとこれはこれでいいのかもしれません。

そうしみじみと感じたお二人の関係性に気持ちが和んでいると、私はある考えが頭をよぎる。


「……あ、あの、白鳥様……」

それは前々から薄々思っていたことだったけど、簡単に話せる事じゃなくて、これまでずっと言えずにいた。
けど、白鳥様に好かれていると分かった今ならいける気がして、私は恐る恐る彼女の顔を伺う。

「わ、私とお友達になってくれませんか?」

そして、勇気を振り絞り、震えた声で大人になってからなかなか言うことのない言葉を 今この場ではっきりと伝えた。

「…………え?」

すると、突然の提案に白鳥様は目を点にさせ、暫く動きが止まってしまう。

それから流れる暫しの沈黙。

それがどういう意味なのか分からず、私は段々と不安に思い始めた時だった。

「私で良ければ、それは勿論、喜んでお受け致しますよ」

二回目に見せてくれた彼女の満面の笑み。
それは先程よりも、もっと明るく華やかで、心から嬉しそうな気持ちがひしひしと伝わってくる。

そんな表情に安堵と共に湧き起こる達成感と喜び。加えて、楓さんの時もそうだけど、こうして白鳥様とも親交を深めていけば、彼女の素顔がもっと見れるかもしれないという期待も込めて、私も同じように目一杯の笑顔を見せたのだった。


こうして、晴れて友達同士になれた私達は美味しい料理を堪能しながら、時間の許す限り身の上のことや、白鳥様と楓さんの昔話など沢山の話をして、気付けば時刻は閉店間近を指していた。
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