3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「楓さんは今ご自宅ですか?」
そして、先程聞こえた扉の音が、どこか聞き覚えがあるような気がして何気なく尋ねてみる。
「そうだよ。本当はホテルでも良かったけど、美守が居ないと虚しくなるから、あれから一度も行ってない」
すると、とても寂しげな声で心境を打ち明けてきて、久しぶりに聞く楓さんの母性本能をくすぐる発言に、胸を思いっきり締め付けられる。
「そういえば、今日はクリスマスイブですね」
それを知ってか、知らずなのか。彼の性格上気にするようなタイプには思えないけど、あまりにもタイミング良く電話が来たので、私は少し期待を込めて話を持ちかけてみた。
「ああ、そっか。だから外はカップルだらけだったんだな」
けど、その期待は見事に打ち破られ、ある意味予想通りの反応に私はがっくりと項垂れる。
「楓さんはクリスマスにやりたい事はありますか?」
だから、イベント毎にはまるで関心がない彼に少しでも興味を持ってもらいたいのと、彼の考えるクリスマスがどういうものなのか知りたくて、再び期待を込めて話を膨らませてみる。
「別にない。俺は美守が居ればなんでもいいから、やりたい事があるなら言えよ。多分殆どのことは叶えられるから」
これまた、何となく予想していたような返答をされた上に、財閥御曹司の財力を示されたようで、私は思わず苦笑いをしてしまった。
「私は楓さんのお家でまた手料理を振る舞って、ケーキを一緒に食べれればそれでいいです」
「え?そんなんでいいのか?」
一体どんな事を想像していたのか。自分の思い描くクリスマスの過ごし方を話したらとても驚かれてしまい、その反応に私まで戸惑ってしまう。
「クリスマスイブの日は何処も混んでますし、私は楓さんとゆっくり過ごしたいんです。それに、夜景ならあのテラスで十分ですから」
そう伝えると、ふとあの時見た素晴らしい東京湾の光景が脳裏に浮かび上がってきて、うっとりしながら空を見上げる。
「そうだな。俺も外で食べるより美守の料理の方がいいし、それじゃあ、今度のクリスマスは予定が合えばそうするか」
そうやって、さも当然のように話す楓さんの口振りから、まるで、次のクリスマスまでには今の状況が解消されているような。そんな意味にも聞こえてきて、段々と鼓動が早くなってくる。
「楓さんは今日はちゃんとご飯食べましたか?」
一先ず、これ以上話しているとまた余計な詮索をしてしまいそうになるので、私は敢えて話題を変えてみた。
「まだ。とりあえず、今白鳥から渡された報告書を整理してる。なんか今日はあいつ予定あるみたいでさっさと帰ったし」
「ええ!?百合さん、もしかして恋人出来たんですか!?」
「………………は?百合さん?」
…………あ。
しまった。
とても自然に流れていく会話の中で、楓さんの衝撃的な発言により、思わず普段の呼び名で叫んでしまった私は、今更ながらに手で口元を覆った。
「何だよその呼び方。いつの間にあいつとそんな親しくなってんだ?」
そこから、みるみるうちに楓さんの声が低くなり始め、電話越しでも不機嫌そうな様子がよく伝わってくる。
これはもう逃れられないと堪忍した私は、心の中で百合さんに謝罪をしながら、これまでの経緯を洗いざらい全て打ち明けることにした。
そして、先程聞こえた扉の音が、どこか聞き覚えがあるような気がして何気なく尋ねてみる。
「そうだよ。本当はホテルでも良かったけど、美守が居ないと虚しくなるから、あれから一度も行ってない」
すると、とても寂しげな声で心境を打ち明けてきて、久しぶりに聞く楓さんの母性本能をくすぐる発言に、胸を思いっきり締め付けられる。
「そういえば、今日はクリスマスイブですね」
それを知ってか、知らずなのか。彼の性格上気にするようなタイプには思えないけど、あまりにもタイミング良く電話が来たので、私は少し期待を込めて話を持ちかけてみた。
「ああ、そっか。だから外はカップルだらけだったんだな」
けど、その期待は見事に打ち破られ、ある意味予想通りの反応に私はがっくりと項垂れる。
「楓さんはクリスマスにやりたい事はありますか?」
だから、イベント毎にはまるで関心がない彼に少しでも興味を持ってもらいたいのと、彼の考えるクリスマスがどういうものなのか知りたくて、再び期待を込めて話を膨らませてみる。
「別にない。俺は美守が居ればなんでもいいから、やりたい事があるなら言えよ。多分殆どのことは叶えられるから」
これまた、何となく予想していたような返答をされた上に、財閥御曹司の財力を示されたようで、私は思わず苦笑いをしてしまった。
「私は楓さんのお家でまた手料理を振る舞って、ケーキを一緒に食べれればそれでいいです」
「え?そんなんでいいのか?」
一体どんな事を想像していたのか。自分の思い描くクリスマスの過ごし方を話したらとても驚かれてしまい、その反応に私まで戸惑ってしまう。
「クリスマスイブの日は何処も混んでますし、私は楓さんとゆっくり過ごしたいんです。それに、夜景ならあのテラスで十分ですから」
そう伝えると、ふとあの時見た素晴らしい東京湾の光景が脳裏に浮かび上がってきて、うっとりしながら空を見上げる。
「そうだな。俺も外で食べるより美守の料理の方がいいし、それじゃあ、今度のクリスマスは予定が合えばそうするか」
そうやって、さも当然のように話す楓さんの口振りから、まるで、次のクリスマスまでには今の状況が解消されているような。そんな意味にも聞こえてきて、段々と鼓動が早くなってくる。
「楓さんは今日はちゃんとご飯食べましたか?」
一先ず、これ以上話しているとまた余計な詮索をしてしまいそうになるので、私は敢えて話題を変えてみた。
「まだ。とりあえず、今白鳥から渡された報告書を整理してる。なんか今日はあいつ予定あるみたいでさっさと帰ったし」
「ええ!?百合さん、もしかして恋人出来たんですか!?」
「………………は?百合さん?」
…………あ。
しまった。
とても自然に流れていく会話の中で、楓さんの衝撃的な発言により、思わず普段の呼び名で叫んでしまった私は、今更ながらに手で口元を覆った。
「何だよその呼び方。いつの間にあいつとそんな親しくなってんだ?」
そこから、みるみるうちに楓さんの声が低くなり始め、電話越しでも不機嫌そうな様子がよく伝わってくる。
これはもう逃れられないと堪忍した私は、心の中で百合さんに謝罪をしながら、これまでの経緯を洗いざらい全て打ち明けることにした。