3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「は?何言ってんだ。お前には関係……」
「関係なくないです。確かに経営に関しては部外者ですが、私を都内に戻すよう説得するなら、私もその場に居るべきだと思います」
やはり、予想していた通り楓さんは表情を歪ませて嫌そうな反応を示してきたので、私は臆することなく畳み掛けるように思いの丈をぶつける。
「それに、丁度明日から連休なので、仕事の方も大丈夫です。なので、私も一緒に行かせてください」
本当に、こうもタイミングよく休みが被ることは今でも信じられなくて、勝手ながら運命的なものを感じる。
だから、恐怖心はあるけど、けじめを付けるならそこしかない気がして、何とか了承してもらおうと私は必死の思いで二度目のお願いをした。
「…………分かったよ。あまりあの家に美守を連れて行きたくはないけど……」
それから楓さんは眉間に皺を寄せたまま押し黙ってしまったけど、暫くして諦めたように深い溜息を吐くと、渋々首を縦に振ってくれて、私はそこでようやく表情を緩ませることが出来た。
「とりあえず、明日は午後に行くつもりだから、俺は一旦向こうに戻って……」
「あ、あの待ってください」
すると、早くもここで帰ろとうする彼に驚いて、まだこの時間を終わらせたくない私は、それを引き止めようと咄嗟に声をかける。
そして、ある考えが頭の中に浮かびあがった瞬間、私の鼓動は徐々に速さを増していく。
「……もし、差し支えなければ、今夜は家に泊まっていきませんか?これから戻ると時間もかなり遅くなりますし……」
我ながら何て大胆な提案をしているのだろうと頭の中ではパニック状態になっているけど、気持ちが先走ってもう歯止めが効かない。
そんな全身湯気立つ程の熱を放出しながらたじたじになる私を、楓さんは目を点にしながら何も言わずに凝視してくる。
その視線の意味がどういう事なのか分からず、私は段々と不安になりながら彼の返答をじっと待った。
「それ、どういう意味で言ってるのか分かってるのか?」
暫くしてから、呆気に取られていた楓さんの目が急に鋭く光りだし、少し低い声でそう尋ねられたことに私は思わず肩を小さく振るわせる。
確か以前ここへ来て初めて楓さんと電話した時に言われた“覚悟しとけ”という言葉通り、私は再会出来ることを信じて、あれからずっと心づもりしてきた。
だから、覚悟はもう出来ているので、恥ずかしい気持ちで押し潰されそうになるのを必死に堪えながら、無言でゆっくりと頷く。
「……それなら、案内しろ」
そんな私の心中を察したのか。楓さんは至極真面目な顔でそう告げると、そのままシートベルトをはめてエンジンをかけてから車を発進させる。
私も助手席のシートベルトをはめて、それ以上余計な話はせず、言われるがまま道を案内した。
その間、またもや車内には長い沈黙が流れる。
けど、今の私はそんなことは何も気にならなかった。
それよりも、これから起ころうとすることに頭の中が真っ白になって、心に全く余裕がない。
一方、楓さんは終始落ち着いた様子で、ひたすら前だけを見て静かに車を運転させていた。
職場と社員寮は歩いて十分もかからないので、そうこうしている内にあっという間に自宅へと到着し、私達は車を降りてから、それ以降もお互い無言のままエレベーターに乗って自分の部屋へと向かう。
そして、ようやく自宅の前に辿り着くと、私は鞄から鍵を取り出し、開錠してから扉を開けようと手を伸ばした時だった。
「関係なくないです。確かに経営に関しては部外者ですが、私を都内に戻すよう説得するなら、私もその場に居るべきだと思います」
やはり、予想していた通り楓さんは表情を歪ませて嫌そうな反応を示してきたので、私は臆することなく畳み掛けるように思いの丈をぶつける。
「それに、丁度明日から連休なので、仕事の方も大丈夫です。なので、私も一緒に行かせてください」
本当に、こうもタイミングよく休みが被ることは今でも信じられなくて、勝手ながら運命的なものを感じる。
だから、恐怖心はあるけど、けじめを付けるならそこしかない気がして、何とか了承してもらおうと私は必死の思いで二度目のお願いをした。
「…………分かったよ。あまりあの家に美守を連れて行きたくはないけど……」
それから楓さんは眉間に皺を寄せたまま押し黙ってしまったけど、暫くして諦めたように深い溜息を吐くと、渋々首を縦に振ってくれて、私はそこでようやく表情を緩ませることが出来た。
「とりあえず、明日は午後に行くつもりだから、俺は一旦向こうに戻って……」
「あ、あの待ってください」
すると、早くもここで帰ろとうする彼に驚いて、まだこの時間を終わらせたくない私は、それを引き止めようと咄嗟に声をかける。
そして、ある考えが頭の中に浮かびあがった瞬間、私の鼓動は徐々に速さを増していく。
「……もし、差し支えなければ、今夜は家に泊まっていきませんか?これから戻ると時間もかなり遅くなりますし……」
我ながら何て大胆な提案をしているのだろうと頭の中ではパニック状態になっているけど、気持ちが先走ってもう歯止めが効かない。
そんな全身湯気立つ程の熱を放出しながらたじたじになる私を、楓さんは目を点にしながら何も言わずに凝視してくる。
その視線の意味がどういう事なのか分からず、私は段々と不安になりながら彼の返答をじっと待った。
「それ、どういう意味で言ってるのか分かってるのか?」
暫くしてから、呆気に取られていた楓さんの目が急に鋭く光りだし、少し低い声でそう尋ねられたことに私は思わず肩を小さく振るわせる。
確か以前ここへ来て初めて楓さんと電話した時に言われた“覚悟しとけ”という言葉通り、私は再会出来ることを信じて、あれからずっと心づもりしてきた。
だから、覚悟はもう出来ているので、恥ずかしい気持ちで押し潰されそうになるのを必死に堪えながら、無言でゆっくりと頷く。
「……それなら、案内しろ」
そんな私の心中を察したのか。楓さんは至極真面目な顔でそう告げると、そのままシートベルトをはめてエンジンをかけてから車を発進させる。
私も助手席のシートベルトをはめて、それ以上余計な話はせず、言われるがまま道を案内した。
その間、またもや車内には長い沈黙が流れる。
けど、今の私はそんなことは何も気にならなかった。
それよりも、これから起ころうとすることに頭の中が真っ白になって、心に全く余裕がない。
一方、楓さんは終始落ち着いた様子で、ひたすら前だけを見て静かに車を運転させていた。
職場と社員寮は歩いて十分もかからないので、そうこうしている内にあっという間に自宅へと到着し、私達は車を降りてから、それ以降もお互い無言のままエレベーターに乗って自分の部屋へと向かう。
そして、ようやく自宅の前に辿り着くと、私は鞄から鍵を取り出し、開錠してから扉を開けようと手を伸ばした時だった。