3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
私が開けるよりも先に楓さんの手が伸びてきて、勢いよく扉を開けると、私の腕を引っ張り部屋の中へと引き込む。
そして、扉が閉まった瞬間、私は楓さんに突然肩を掴まれ背中を扉に押し付けられてしまった。

「か、楓さ……んっ」

一変した彼の行動に混乱して名前を呼ぼうとした瞬間、それを遮るように楓さんの唇が私の唇を塞いできて、そこから何度も何度も角度を変えては貪るように食らいついてくる。

いつもなら、ゆっくりと落ち着いたキスをしてくれるのに、今は欲望のまま荒々しくて、激しく私を求めてくる。

その勢いと若干の息苦しさに思わず口を少しだけ開いた途端、その隙を狙って楓さんの熱い舌が口内へと侵入してきて、ひと息つく間を与えず、私の舌を絡めとってきた。

そこから執念に彼の舌が纏わりついて口の中で暴れ回り、久しぶりに感じる高揚とした気持ちに思わず甘美な声が漏れてしまう。

「だ……め、苦しい……」

ようやく唇が解放され、長い間呼吸を上手くさせてくれなかったので、私は楓さんの熱い胸板に両手をついて肩で息をしながら、潤んだ目で彼を見上げる。

「悪い。これまでずっと我慢してたから、つい」

そんな私を愛おしそうな目で見てきた後、悪戯な笑みを浮かべると、親指で私の顎を引き、額や両頬、鼻、上唇の真上、その次は顎、そして首筋にと。
今度は唇を避けた場所にゆっくりと口付けを落としてきて、まるで焦らされているような感覚に、私はもどかしくなって彼の服をギュッと掴む。

「物足りないか?」

すると、その心境を分かっているのか、楓さんは満足気に笑い、私と視線を合わせてくる。

「楓さんのバカ」

まるで弄ばれているような状況に少し悔しくなった私は、不満気に頬を膨らませ、滅多に言わない暴言を吐いて彼を軽く睨みつけた。

「だから、そうやって煽るなよ。これから嫌って程味わせてやるから」

けど、彼にとっては私の反抗なんて全くの無意味の上、むしろ触発させてしまったのか。耳元で熱のこもった吐息混じりの甘い声で囁かれてしまい、背中がぞくりと震える。

そして、もう一度唇を塞ぎ、上唇と下唇を軽く吸ってから食べるように唇全体を覆われた後、口の隙間から再びぬるりと彼の舌が滑らかに侵入してくる。
そこから思考力を奪うような、甘く全身を蕩けさせる自由自在な彼の舌遣いに段々と気持ちが昂ってきて、次第に私からも彼を求めて積極的に舌を絡ませた。

「……ベッド、行くか?」

長い間深いキスをじっくり堪能した後、唇を離してから真剣な目でポツリと呟くように言われた楓さんの一言に、私は心臓が大きく跳ね上がる。


……いよいよ、なんですね。

言葉には出さないけど、そう心の中で確信付くと、緊張で徐々に心拍数が上がる中、私は口をぎゅっと結んで徐に首を縦に振った。

それから私達は少し離れると、無言のまま靴を脱いで部屋の中へと入り、お互い着ていたコートを脱いでから寝室へと向かう。

覚悟はしていたものの、いざその時が来るとやはり恥ずかしさと困惑と少しの恐怖が襲い、次第に頭の中がパニック状態へと陥ってくる私は、小さく体を震わせながら自分のベッドの前で立ち尽くしてしまった。

「大丈夫。あの時は勢いであんな事言ったけど、ちゃんと手加減するから」

そんな私を楓さんは優しく後ろから抱きしめて安心させるように耳元で囁くと、私の片頬に手を添えて少し強引に視線を合わせてきた。

私はその綺麗な琥珀色の瞳に暫く魅せられていると、楓さんは額にそっと口付けを落としてから、自分の唇を私の唇にゆっくりと重ねてくる。

先程とは違う、今度は啄むような軽いキスを何度かされていくうちに、強張っていた体が徐々にほぐれていき、私も楓さんの両腕を掴んで、こちらからも彼を求めていった。
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